ジプシーと都市文化のバレーと農耕民族のサッカー


リカルド・クアレスマ

ジプシーと都市文化のバレーと農耕民族のサッカー

EURO2008 ・オーストリア / スイス大会でのルーマニア10番、アドリアン・ムトゥ選手。この選手があげたイタリア戦での得点シーンは印象的であった。サイドから中へ上がったセンターリングをイタリアDFジャンルカ・ザンブロッタがキーパーへとヘディングで返す。

この一連の動きを予測していたルーマニアのFWムトゥはザンブロッタがヘディングでボールをキーパーへと落とす際にすでにそのボールがグラウンドに落ちるであろう位置を予測してザンブロッタとキーパーの間に向かって走り出す。

ヘディングをした瞬間、ザンブロッタはあっ、まずい、と思ったことであろう。きっと視界の端でムトゥがキーパーへ向かって動き出しているのを捉えていたに違いない。しかし遅すぎた。

ボールがグラウンドに着いた瞬間、跳ね返りであがってくるキーパーがキャッチする瞬間の一瞬をついて、ムトゥはボールにギリギリ届かすように足の爪先を伸ばし、わずかにボールを触る程度で方向を変え、ボールはイタリアのキーパー、ジャンルイジ・ブッフォンの横をすり抜け、ゴールネットへと吸い込まれていったのである。

このゴールを見た瞬間、村上龍氏と評論家の三浦雅士氏の対談を思い出してしまった。その対談のテーマには「キューバ – 言語と肉体とリズム」とあった。その対談の中で興味を持った記述にジプシーとバレー、日本の能などの踊りについて語られた部分があったんだけど、ルーマニアのアドリアン・ムトゥのゴールを奪う姿勢を見てその記述を思い出してしまったんだよね。

農耕民族と遊牧民

舞踏っていうのは 3 種類って言うか、大きくいうと 2 種類あるんだよね。それは“舞踏”って書くでしょ。その舞うっていうのは回ることなんだね。これはだいたい農耕民族のものなんだ。で、特徴は大地から足をはなさないわけ。たとえば日本で激しい踊りだって言われてても、四国の阿波踊りみたいなのでも、絶対地面から足を離してないでしょ。ピュッ、ピュッって手を交互に出して、こういうふうに行くだけじゃない。

で、農耕民族。その典型的なのは能だね。それともう一つは踊りっていうのがあって、それは跳ねるやつなの。その典型的なのはバレエだけれでも、その跳ねるのはどこから来るかというと・・・。

能の跳ねるっていうのは踵で大地を踏むことなんですよ。ところがバレエの跳ねるっていうのは爪先なんだよ。爪先の文化と踵の文化とは全然違うわけ。農耕と遊牧民。爪先で立っていないとフェイントできないんだからね。バスケットボールでもサッカーでもラグビーでもアメリカン・フットボールでも。

んか面白いでしょう。農耕民族的な日本サッカーなんていったら案外うなずける部分が見えてくるかもしれないね。リスクを犯すことなく自分の定位置で勝負をかける有機的な変化に対応できない。ボール回しや攻撃へ移るときに奏でる全体の音楽的リズムに乗った調和的ハーモニー。ヨーロッパバレエの要素がサッカースタイルに当てはまるというのは納得してしまうよ。

これにもう一つ、あるリズムが加わる。それがルーマニあのアドリアン・ムトゥやかつてのクロアチア10番、 AC ミランの 10 番、ズボニミール・ボバン選手などが所有しているものである。この二人の顔つきがとてもよく似ているんだよね。ある民族の特徴ある顔つきをしているんだ。その民族とはジプシー、ロマである。

ジプシー、ロマ

ロマ( Roma 、単数形は Rom )は、北インド起源のロマニ系に由来する移動型民族。移動生活者、放浪者とみなされることが多いが、現代では定住生活をする者も多い。

過去、ジプシーとして知られた民族を、ジプシーはエジプト人という誤解から来ていること、及び、ジプシーという言葉が偏見、差別的に使用されていることなどを理由に、最近では彼等全体をロマ(その単数形のロム)と呼ぶようになっている。 ただし、ロマという呼称はジプシー全体を指すものではなく、ジプシーという言葉に差別的ニュアンスがまとわりついているという考えが、即すべてのジプシー集団に共通する見解でもないとされている。

ジプシーという呼び名は、「エジプトからやって来た人」という意味の「エジプシャン」の頭音消失したものと言われる。彼らの主流は、インドから移動してきたと考えられているが、非インド起源であることをアイデンティティとするジプシーとして、コソボ紛争で有名になったアッシュカリィやエジプシャンなどがある。

アルバニア語を母語とする彼等はロマとアルバニア系等との混血の子孫とみられるが、特にエジプシャンはアレキサンダー大王に従って移民したエジプト系の末裔を自称しており、それぞれがロマとは別のグループであることを主張する傾向がある。

元々の宗教はヒンドゥー教だったと考えられているが、定住した土地での主流の宗教に改宗することが多い。東ヨーロッパでは正教またはイスラム教、西ヨーロッパではカトリックかプロテスタントである。独特の神秘主義的な風習はあるが、それは宗教とは別と考えられている。 (ウィキペディア参照)

ンドゥー教の血を受け継いでいる辺り、もう右脳が強いといっているようなものだ。ルーマニアのムトゥにクロアチアのボバンは絶対にジプシーの血が流れていると思う。そして先ほどの対談に戻るけど、ジプシーの特徴をこのように語っている。

大地を蹴って去っていく

片一方に、大地から足を離さない舞というのがあって、片一方に、ぽんぽこ、ぽんぽこ跳ねるのがあるでしょ。その中間のがあって、それは大地を蹴るんだって。これは五木寛之の説なんだけど、その大地を蹴って去っていくっていうふうなのがジプシーだっていうのよね。

フラメンコなんかもそうなの?

そうだっていうわけ、彼は。

大地を蹴って去っていく?

そうそう。大地を蹴って去っていくっていうのは、つまり移動するっていうことだね。つまり定着しないの。バレエは都市に定着するっていうわけ、彼の言うには。都市に定着した連中っていうふうなのがバレエをやって、農村に定着したものがやるのが舞だと。

々面白いでしょう。農耕民族、舞、バレエ、都市文化、ジプシー、フラメンコがどうしてサッカースタイルと結びつくのか、といわれてしまえば強引な感情をもたれてしまうのも仕方がないかもしれないけど、ある程度の説得力はあると思うんだよね。

音楽も全くそうね。対応するとおもうね。いちばん簡単な対応っていうのは 3 拍子だよね。日本の舞踏は基本的に 2 拍子もしくは 4 拍子でしょ。中国は 2 拍子、 4 拍子。中国も日本も舞の文化なんだね。つまり大地から足を離さない稲作民族の文化なのね。ところが韓国は違うのね。 3 拍子。やっぱり騎馬民族なのよ。

日本の踊りは基本的に全部舞いの文化なの。でも例外が一つあるんだよね。と、ぼくはあえて思ってんだけど、青森のねぶたなのよね。弘前のねぶたっていうのはやっぱり足をペタッと付けて地から離さない。ただ練り歩く。

ところがね、青森のねぶたっていうのはピョンピョン跳ねるのね。それは非常に例外的なんです。珍しいわけだよ。本州の北端の津軽のねぶたはピョンピョン跳ねる。なぜか。ザンガロっていうのはフランス語でジプシーのことでしょ。で、ジプシーていうのはツィンガルっていうんですよ。ツゴィネルワイゼンのツゴィネル。

津軽というのはそのツィンガルという言葉が変形したんだって説があるんだよね。だからフラメンコ・ギターと津軽三味線のオリジンはユーラシアのど真ん中で一致している。片一方は東に来て片一方は西に来た。そのときに跳ねるっていうか、大地を蹴るっていうふうなのも、東の果てに行ってねぶたになって、西の果てに行ってフラメンコになったと。

このツィガーヌをウィキペディアで調べてみると面白い記述が載っていた。

フランス語において “Tzigane” (ツィガーヌ)は、 “Tsigane”, “Gitan” ともいう。これらは、日本で馴染み深い言葉に置き換えると、「 ジプシー 」 を意味する。「ジプシー」とは英語の gypsy からの外来語であるが、かつては「定住しない放浪者」などの意味合いをもって口にされてきたという側面を配 慮し、現在では偏見的・差別的表現としてその使用が自粛されており、新しく “Roma” という呼び名が広く使われるようになっている。

ロマは、特定の地域 の人々を指すというよりも、生活拠点を移動させながら集団で過ごすスタイルの人たちのことを指すため、一概に同じような文化やある一定の地域性を限定する ことは困難である。

しかしながらラヴェルの作品「ツィガーヌ」においては、ハンガリーの地域性を持ったロマの音楽として構想されている。それは、献呈者である女流ヴァイオリニストがハンガリー出身である事実と、彼女から得たハンガリー音楽のヒントを膨らませながら作曲されたという事実から決定づけられている。 (ウィキペディア参照)

ジネディーヌ・ジダンもジプシーの血筋?

このジタン、という発音を聞いてジネディーヌ・ジダンを連想したひとも居るであろう。

ジネディーヌ・ジダン( Zinedine Yazid Zidane 、 IPA : [[ ˌ zine ˈ din jazi ː d zi ˈ dan]] 、 1972 年 6 月 23 日 – )は、フランス国籍の元サッカー選手。 2006 年 7 月 9 日 の ドイツ W 杯決勝(対イタリア戦)が現役最後の試合になった。

アルジェリア移民 の二世のベルベル人。 マルセイユ北部郊外のラ・カステラン地区の貧困な団地で育った。 ポジションは攻撃的 ミッドフィールダー ( トップ下 )。 愛称 「ジズー」、「 将軍 」(同じフランスのミシェル・プラティニもかつて将軍と呼ばれており、初期の愛称は「プラティニ 2 世」)。なお一部の雑誌などでは、より原音に近い「ジダヌ」という表記がなされることもある。 (ウィキペディア参照)

はフランス人だが、アルジェリア系の移民の子ども。アルジェリアのある北アフリカはジプシーの先祖がインドからヨーロッパへ移動する際の南のルートの一つになっている。スペルなどが違っているので断言はできないけどジダンもジプシーの血を受け継いでいると思われるのだ。

ラテン語を勉強されている方ならわかると思うが、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、フランス語、ルーマニア語などはある単語のスペルがお互いに似ているというか、オリジナルなものから独自のものに派生した、と思われるようなスペルになっており、元となった語源や、接頭語、接尾語などの意味を調べてみると同じ意味をなすことが多い。

だからある程度のスペルの違いももとを正せばオリジナルは同じところから発生している可能性があるわけで、 Gitan の意味するジプシーもジダンに繋がると思うのである。もう一つ、ジプシーの音楽と関連するものにクレズマーというのがある。

クレズマー( כלזמיר , Klezmer )は、 東欧系 ユダヤ (イディッシュ)、アシュケナジムの民謡をルーツに持つ音楽ジャンルのひとつ。有名な曲に「 ドナドナ 」や映画『 シンドラーのリスト 』( スティーヴン・スピルバーグ監督)の音楽などがある。

起源はバルカン半島北部を含む東欧とドイツである。スピーディーで激しいダンス音楽から、ゆったりしたテンポのバラードまでさまざまなスタイルがある。おおむねクラリネットとヴァイオリンが加わっているのが特徴となっている(音階は参照)。

ルーツとなった東欧やバルカン半島北 部では 16 世紀ごろに生まれ、 19 世紀ごろよりアップ・ビート(テンポの速い)音楽スタイルとして確立。ヨーロッパでは現在に到るまで、ロマの音楽(いわ ゆるジプシーの音楽)として存在し、はっきりと区分けすることは不可能なうえ、同様な演奏スタイルのグループやバンドはフランスやスペインにも、さらにはイスラエルにも存在する。

米国では、 19 世紀後半からの東欧系ユダヤ人の移民と、第二次世界大戦前後に東欧やドイツを逃れたユダヤ人らが、婚礼などの儀式を通して継承、 1920 年代にはユダヤ系米国人の間でポピュラーな音楽となった。 (ウィキペディア参照)

リカルド・クアレスマ も?

レズマーと聞いてあるプレーヤーを連想した方は中々のサッカー通である。そう、ポルトガル代表、 FC ポルトでプレーするリカルド・クアレスマである。彼の顔つきもインド系が混じっているなぁという感じなんだよね。

クレズマーにクアレスマと似ているようでも違うじゃないか、と思われそうだけど、ローマ字を見てみると K と Q だけど発音が微妙に似ている。ムトゥにボバン、ジダンにクアレスマ、とどの選手もトリッキーなプレーを魅せ、スキルといいゲームメイクのアイディアといい、どこかジプシー的なのだ。津軽地方出身のサッカー選手はいないのかなぁ?

ジプシー

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