マスターズ・トーナメント2003、フィル・ミケルソンの哲学


マスターズ・トーナメント2003、フィル・ミケルソンの哲学

年もマスターズ・トーナメントの季節がやってきた。毎年4月に入るとアメリカは夏時間に入るので、それだけで嬉しい気分になる。寒くて長い冬からやっと春の気配を感じることができる陽気に包まれるからかもしれない。そしていろいろなスポーツイベントが始まる季節でもある。そのひとつがこの4月13日におこなわれたゴルフのビックイベント、マスターズ・トーナメント。

試合の模様を話す前に、このマスターズ・トーナメントがおこなわれるゴルフコースのことについて少し。その名もオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ。まず一言、なんて美しいコースなんだろう、と。フェアウェイのきれいに整えられた芝。その隣にあるラフですらきれいに正確に保たれている。きれいな白砂で埋められた見事なまでのバンカー。コースのところどころを流れる小川。それらにかかる大小の橋。そして数々のドラマの幕切れを演出してきたグリーン。

このコースを見ているうちに僕がアメリカへ最初に来たときに過ごした、ノースカロライナ州シャーロット大学キャンパス内を思い出した。シャーロットもアトランタから近いせいか、今時感じる気候は同じである。懐かしい。寒い冬の後のキャンパス内の緑の美しさ。小さな池にはカモの親子が水辺で遊び、そこらじゅうから鳥の鳴き声が聞こえたものだ。

太陽は夏時間に入っているためすでに眩しく、夕方から日が沈むまでが長い。この懐かしい思い出をオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブから感じ取っていた。数あるゴルフ・トーナメントの中で必ず毎年見るのはマスターズだけ、というのが自分なりにわかった気がした。

今年は木曜日に雨が降ったためにその日は中止となり、翌日の金曜日に2ラウンドまわるというスケジュールだった。戦う選手たちはタフである。このトーナメントのある1週間は日曜日にグリーンジャケットを手にするために全精力を傾けて戦うのだ。タフな野郎を相手に戦う上に、それらの選手よりも上に行くためにさらにタフにならなければいけない。

日本の選手はどうだったか? 片山が予選を通過したけど思うような結果を出せなかった。タイガー・ウッズはどうだったか? 彼にしては珍しく不本意な成績で今年のマスターズを終えた。序盤で思わぬミスを犯したことをホールアウトした後のインタビューで語っていた。

キャディの推選するクラブで攻めるのではなく、あえて自分で信じた戦略を選んでミスしてしまった。18番ホールをあがってくるタイガーには、優勝を決める最後のパットを沈めに来るときに発しているオーラはどこにも見当たらなかった。集中力がまったくない、あきらめの表情を見たのは初めてだった。

今回、印象に残ったのは3年連続して3位に甘んじたフィル・ミケルソン。この選手のホールアウトしてからのインタビューに感銘を受けた。曰く、確かに勝者、敗者という観点からみれば自分は敗者だが自分のプレーを振り返るならば成功したと思う、と語っていた。決して負け惜しみには聞こえてこなかった。

この1週間を通じてここまで自分のプレーをもってこれたことに誇りに思っていること。最後の通算成績が5アンダーで優勝をしてもおかしくない成績だったこと。だからそのことに成功したんだといえること。

たまたま自分よりもいい成績でプレーした二人がいただけで、自分のプレーには満足していること。どういう風に伝えればいいのだろうか。フィル・ミケルソンの哲学のようなものを感じたのだ。3年連続してマスターズ・トーナメント3位、というのも確かにすごいことだ。

マイク・ウェア優勝

しくも2位という結果になってしまったのは、その日18番ホールまでトップを走っていたレン・マティウス。過去、去年までこれといった目立った成績を残していなかったが、去年から徐々にトーナメントで勝ちを収めていく。そのレン・マティウスは18番まで8アンダーで2位のマイク・ウェアをリードしていた。16番でバーディーを取ったとき、これで行ける、とおもったに違いない。続く17番は手堅くパーで収め残りの18番を迎えた。

最後のグリーンへのアプローチショットを少しオーバー。第3打となった寄せも思ったよりピンによらずかなり長めのパーパットを残していた。ここでのプレッシャーは相当のものだったに違いない。結果、パーを決められず、痛恨のボギー。このパットも実に危うかった。

解説者までが力んでいた。最終結果はスコアーをひとつ落として7アンダーでホールアウト。だが、そのとき15番ホールをまわっていた2位のマイク・ウェアはバーディーを奪う。ついに7アンダーで首位に並ぶことになった。

この時点で、マティウスはプレーオフの準備を始めるがまだ相手のウェアが最終ホールを終えるまでに40分近くもあった。さて15番で首位に並んだウェアは一転して攻めのゴルフを展開する。ティーショットといいアプローチからグリーンの上でのパットにいたるまですべてにおいて自信にあふれていた。残りの3ホールでバーディーをひとつ取ればいいのである。

もう一人の首位マティウスはすでにホールアウトしていたので勝てるチャンスは十分にあったはず。しかし、残る3ホールすべてパーでプレーオフに突入することになった。勝負はあっけなく最初のホールで決まってしまった。マイク・ウェア優勝。マスターズの歴史上、最初の左利きプレーヤー。最初のカナダ人優勝者。

レン・マティウスは自分の中に余力が残っていなかった感じがプレーの中から伝わってきた。最後の18番ホール。ワンショットの重みを十分に噛み締めたに違いない。今年も十分に楽しめたマスターズ。日本人がマスターズで優勝する日をいつになったら見れるのだろうか?

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