文武両道のススメ、日米その比較(その1)


大家友和

文武両道のススメ、日米その比較(その1)

なり前のことになるが、NHKでスポーツジャーナリストのマーティー・キーナート氏が語る番組を偶然見た。タイトルは「大リーグの文武両道と日本」というものだった。かなり内容のあるお話をされていたので、ここで簡単に大筋を皆さんに紹介したいと思う。

まず、彼の話はメジャーリーグで活躍するモントリオール・エクスポズの大家友和についてから始まった。大家は1998年、日本野球界へ出てきたときは無名の選手だった。4横浜ベイスターズの選手として頑張ったが34試合に出場してわずかに1勝2敗という成績を収めるだけで終わる。

その後ボストン・レッドソックスと契約したときには野茂、イチロー、松井のように話題にはならなかった。だがメジャーリーグに入ってからこの選手の才能が開花することになる。マイナーリーグからスターとして15勝0敗というすばらしい成績を残し、3Aの野球で完全試合を成し遂げた。メジャーリーグに昇格してからはボストン・レッドソックスで6勝をマーク。

そして2001年、モントリオール・エクスポズにトレードされてから本当に彼が伸びることとなった。去年13勝でチーム一番という成績を残し、防御率もチーム一番の3.18という数字。その大家はこの春に立命館大学に入学。マーティー氏曰く、この行動はたいへんほめるべき、だという。日本人初の大学生メジャーリーガーの誕生。だがその大家の行動に対していろいろなところから批判が噴出することになる。

ある野球解説者のお話を例に出すと、その人曰くこう語ったらしい。

「俺は大家に喝を入れたい。野球なら野球一本でいけばいいんだよ。二束のわらじなんて履くな。なんで15勝、18勝狙ってオフに勉強する暇があったら、もっと他の相手選手のバッターの研究とか、やることがいくらでもあるはずだ。プロなら野球一本で行かなくては。」

いうような内容とか。プロなら野球一本で行かなくては・・・そのコメントを聞いたマーティー氏は非常に残念に思い次のように反論を展開する。

「人間はすばらしい才能を持っている。そのポテンシャルはすばらしい。日本には一筋に行く美学がある。がむしゃらによそ見しないで、他に何にもしないで、一つのことに没頭する一筋美学。若者は有名な野球選手、サッカー選手、大相撲の力士を夢見る。ほとんどの人たちは教育を捨てて、その夢を追っている。

その教育を捨てて夢を狙っているのは非常に危険なことだと思う。中学、高校と受験を選ぶかスポーツの道を歩むかしか選択がない日本の学生たち。ほとんど日本の場合は文武両立の制度がないのが現状。アメリカのメジャーリーグには弁護士や医者がたくさんいる。」

と語り日本で昔活躍した一人の野球選手のお話をされる。

ゲイル・ホプキンズ

975年に広島が優勝したのはもちろん衣笠祥雄や山本浩二の存在があったからだが、ゲイル・ホプキンズのお陰だったと言ってもいいとマーティー氏は語る。その年のホームラン王に打点王は彼、ゲイル・ホプキンズだった。

普通、日本の野球選手は試合が終わってから夕飯を食べてそのあとに遊びに行ったり、飲みにいったりしていた。ホプキンズは試合後すぐホテルに帰ってすぐ寝て、朝早く起きてずっと勉強していた。なんと13年間ずっと野球をやりながら医学の勉強をしていた。そして1977年、プロ野球の生活を終えてその後、ゲイル・ホプキンズは医師になった。現在はシカゴで外科の先生をしている。息子も娘もお医者さんである。

これはアメリカだけの話ではなく他の国も文武両道のシステムが確立されている。海外の場合は両立できる制度になっていることも、マーティー氏は強調されていた。

もう一つの例。1990年から1995年の神戸製鋼のイアン・ウィリアムスという選手。もっとも小柄な選手だったがその人のすばらしい活躍によって、この期間負けなしのすばらしい成績を神戸製鋼は残す。70以上の連続勝利という快挙もイアン・ウィリアムスなどのお陰であったらしい。その彼は現在弁護士として活躍中。2年前からオーストラリアで弁護士の資格を手に入れた。

このようにスカラーアスリートは世界中にたくさんいる。世界チャンピオンやオリンピック金メダルを取ってそれと同時にエンジニアになったり、作曲家、弁護士や医者を目指す、いろいろな競技の選手たち。日本にはどうしてこのような文武両道を確立している選手が少ないのか、不思議でしょうがない、とマーティー氏。日本にはすばらしい一筋美学がある。その美学も確かにいいが、スポーツ選手は教育を忘れないでほしい。

そしてもう一つは柔軟性のない日本の教育制度。教育システムが非常に硬いとも指摘をされていた。日本にも海外で見られるような柔軟な教育制度があれば、様々な人たちのポテンシャルはさらに伸びるだろう。

非常に内容のあるマーティー氏の話である。アメリカへ来てからこのようなことは自分でも感じていた。アメリカには自分が住んでいるローカルの範囲にとてもすばらしい人間がたくさんいることに驚いた。スポーツもすごくて、それでいて日本にいるようなスポーツ馬鹿ではない人たち。教養があり知的な仕事、プロフェッショナルな仕事を同時にこなしている人たちが、身近にたくさん存在することに驚いた。

日本でも野球の大家友和や大相撲の力士、岩木山などが大学などでオフの間勉強をしていることがメディアを通じて一般社会に知らされるようになってきた。このようにすこしずつでも例がでてくれば、それに続く人々が現れてくるはずだ。そうしていかないと日本の社会は人間的に貧しい人がたくさん住んでいる世の中になってしまうだろう。

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