自動車産業はどこへ行く、その1 – ガソリン自動車の未来、トヨタの戦略

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プリウス

自動車産業はどこへ行く、その1 – ガソリン自動車の未来、トヨタの戦略

月の初め1日にF1アブダビGPが終わり、華やかなF1サーキットはジェンソン・バトン(英国、ブラウンGP・メルセデス)が総合優勝を決め、2位には若きエース、セバスチャン・ベッテル(ドイツ、RBRルノー)がその位置を占めた。

これでF1は今年の日程をすべて終了。最終戦となったアブダビグランプリ(Abu Dhabi Grand Prix)はアラブ首長国連邦のアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行われ、お披露目開催となった今回のレース、サーキット周りに浮かぶ大型ヨットにサーキット内に君臨する超豪華ホテル。アラブ金持ち国家、石油産油国オイルパワーを悠々と見せ付ける。

オイルマネーのパワー

イルマネーで潤う産油国にしては遅すぎるF1スポーツへの投資。きっと古今話題のドバイの成功?(ちょっと今かなり問題視されてますが)が西側文化を見直すきっかけとして上手く働いたのかもしれない。中東のオイルパワーを象徴するような都市ドバイがいろいろな人、ものを惹き付ける。

まず目立った動きを見せ始めたのがヨーロッパにおけるサッカー界でのオイルマネーであり、ヨーロッパ各リーグからこれはと思う選手に狙いを定めては中東の国内リーグに移籍するようアプローチ。金銭面、待遇面で短期短命のスポーツ選手生命にアピールしないわけが無い。多くの選手が中東へと移籍している。

ある産油国の一つでは早い時期からアフリカの若者をプロ使用に育てるための選別にかけ、これはと思う未来のサッカー選手の卵には自らの国へ呼びよせ、その国へ帰化させる。もちろん貧しい国からくる若者に躊躇は無い。財政面での保障、家族も呼び寄せることができ、サッカーに打ち込める環境も整う。誰が断ろうか?

国際マッチのサッカー大会で自国勝利実現を達成するためにここまで動き出している産油国は本気だ。サッカーほど自国民のプライドにアピールするスポーツはないであろう。そして始まったばかりのF1への投資。これ以外にもテニス、ゴルフといったものへの投資も盛んになるに違いない。

F1アブダビGPが象徴していたもの

日本人ドライバーがF1へ参戦し始めたのが1987年。中島悟はあのアイルトン・セナと同じチームメイトとしてデビューを飾り、多くの日本人がF1という巨大なヨーロッパ貴族文化の象徴というものに感心を寄せていくようになるきっかけを与えられた。

あれから20年余りが過ぎ、中島悟の息子、中嶋一貴(ウィリアムズ・トヨタ)がF1ドライバーとして活躍している。今年はチームメイトのロズベルグが34.5ポイントを獲得したにも関わらず、1ポイントも獲得できずに終わった。

日本人ドライバーはやっぱりここでも世界で勝てない。バブル絶頂期にF1ブームが起こり、日本経済の失速とともに日本企業のF1からの撤退ニュース。ホンダは去年、今年はブリジストンにトヨタがF1界を去ることなる。

勝てない日本人ドライバーに撤退する日本企業。どこか今の日本社会を象徴しているようで寂しい感じがする。国にも社会にも日本人にも、もはや勢いというものは消えうせてしまったのだろうか?

アジア人ドライバーズチャンピオンは大韓民国から

年のF1開催スケジュールを観てみると世界経済がどのように動いているのか想像できよう。中でも目立つのがアジア新興国からの参戦である。第3戦のマレーシアグランプリ、第4戦の中国グランプリ、第15戦のシンガポールグランプリ、第16戦の日本グランプリ、そして第17戦は韓国グランプリという具合になっている。

ここに産油国の開催国を並べてみると第1戦のバーレーングランプリ、第18戦のアブダビグランプリとなる。BRICsの中ではロシアだけがこの中に入っていないけどそのうちモスクワグランプリなんていうのが開催されるかもしれない。インドはどうした? なんと2011年よりインドグランプリ(ニューデリー)が開催される方向で10年契約まで済ませているらしい。

VISTAの中ではどうであろう? ベトナムにインドネシアはまだまだ先のことだろうが南アフリカ開催はアフリカグランプリ予定地としてケープタウンが上がっている。トルコグランプリは来年の第7戦開催予定地に入っている。アルゼンチンもウィキペディアには開催国に追加される可能性のある国の中にリストアップされている。

すべてを象徴しているではないか! モータースポーツ発祥の地、ヨーロッパで貴族文化としてF1が君臨し、その中から日本経済の強さ、自動車にエレクトロニックスの高い性能を武器に力をつけF1界にデビューした日本。

中国が経済特別区を作り自国経済を発展させて、中国経済の強さを見せ付けるようになり、それに伴って中国に投資したり、中国経済と関わりのある周辺諸国が潤うようになる。中国、マレーシア、シンガポール、ベトナム、インドネシア、韓国などの中から日本が抜けてしまう日が本当に来てしまうのではないだろうか?

新興国の強さ、インド、トルコ、南アフリカ、ロシア、アルゼンチン、ブラジル。そして石油産油国のオイルマネー。どこを見ても日本の匂いがしなくなっている。

トヨタF1撤退

では、F1は果たしてこれからも自動車のイメージを向上させることができるでしょうか。ここに、カーメーカーがF1から撤退せざるを得ない大きな理由が存在すると思うのです。

自動車をめぐる状況は、これまで速さや豪華さから、環境対応、エネルギー対応へと大きく変わっています。9月に開催されたフランクフルトモーターショーでも、先の東京モーターショーでも、カーメーカーが舞台に上げたのはハイブリッド車や電気自動車といった環境・エネルギー対応車でした。ヨーロッパにおいても、日本においても、人々の関心もまた速さや豪華さから環境、エネルギーにシフトしています。日本においては新型プリウスが24万台もの受注を抱えていることも、そのひとつのあらわれでしょう。

一方で、F1が表しているものは、まさにスピードであり、それを得るための高度な技術です。これは、自動車に対する20世紀の夢だったのではないでしょうか。より速く、より快適に、より豪華に、より遠くへ……。( トヨタF1撤退 F1消滅か  )

NHKスペシャル「自動車革命」、トヨタの戦略

調度F1が今年のスケジュールを終える頃、こちらのTVJapanでNHKスペシャル「自動車革命」を見ることができた。新興国、石油産油国、日本、と比較せずにはいられないF1業界のパワーゲームの展開を気にしていたところのタイミングだったので、僕にとっては大きなインパクトとなる内容であり、これはまとめておく必要があると即座に思った。

第1回目はトヨタの戦略、これからの自動車戦略を特集していた。トヨタの戦略とはずばりプラグインハイブリッドカー。ハイブリッドカーといえばトヨタのプリウスというほど、今では市場の信頼を勝ち得てしまった感がある。遅れてホンダもアメリカ市場でプラグインハイブリッドカーを投入したようだが、この展開が今後どのようなものになるのかは予測がつかない。

トヨタ自動車側の読みとしては今後、すぐには今話題の電気自動車市場にはならないだろうとのこと。20年先はまだガソリン車というものの需要はなくならず、電気自動車が社会的にもインフラが整った状態になるまでにもまだまだ時間がかかるはず。

その間、ガソリン車と電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドカーとして両方の美味しいところを組み合わせたトヨタの自動車技術は需要があるはずだ、とこれで勝負に挑む意気込み。

中々良い作戦じゃないか、と思っていたんだけどNHKスペシャル「自動車革命」第2回目を観て、待てよ、という気がしないでもない雰囲気になってしまった。電気自動車市場で起こっていることが凄かったのだ!

こうなってくると幾らガソリン車でたくさんのクリティカルな技術を溜め込んだトヨタでもモーターと電池で動く電気自動車のクオリティーが市場で認められるようになるにつれて自動車というものはコモデティ化してしまうのではないだろうか? 20年も余裕があるだろうか? 20年も市場は待ってくれるだろうか? ( 自動車のコモデティ化は防げるのか?  )

ソニーになる危険性

んのちょっと前までウォークマン始めソニーといえば誰もが憧れる電化製品、ソニーライフというブランド志向の言葉まで発生し、ソニーを所有することはそれだけでステイタスになっていた。高級ブランド嗜好とでも言おうか!

しかしソニー率いるリーダーが変わり社風が変わり、その戦略が変わりといった愚行を繰り返し、見事にそれが市場に跳ね返ってくるようになる。ウォークマン、プレステは過去のものになり、多くの技術者はライバルメーカーに移籍していく。液晶テレビで韓国ブランドが強い秘密はこのような事情があるらしいのだ。

そして今のトヨタを見ているとどうもかつてのソニーになりはしないか、という感じがしてあらたなプラグインハイブリッドカーがもしかしたらトヨタの自動車界不動の地位を大きくぐらつかせるきっかけになりはしないだろうかと心配するのだ。

ソニーは自社製品の技術力の高さばかりを自慢し、それに驕りマーケット、消費者側の志向を観察しなかった。トヨタも自社の技術力、ハイブリッドに今市場に投入しようとしているプラグインハイブリッドカーの技術力の高さに驕り、マーケット、消費者心理を厳かにしてしまいはしないか?

ウォークマンはiPodにプレステはWiiに変わり、すべては今iPhoneに置き換わろうとしている。新しいコンセプト、デジタル社会で新しいマーケットのあり方を構想していったアップル社がソニーブランドを陳腐なものにさせてしまった。

プラグインハイブリッドカーを凌ぐ勢いで市場を独占しようとしている電気自動車業界で今何が起こっているのか? NHK特集「自動車革命」第2回目の内容は書き起こしたいという欲求を自分の中に駆り立てたほどのものであった。

自動車製造業界のマテリアリティ、最近の動向

原油価格の高騰、米国経済の後退により、米国では従来型自動車の新車販売台数が激減している。米国ビッグスリーの米国内市場シェアは50%を割って経営的危機にあり、アジア企業が進出している。燃費・環境問題から小型車需要が急増している。一方、BRICS等振興国の販売市場は拡大し、世界の自動車製造会社が進出している。

日本では、新車販売台数は3年連続減少し、2007年は軽自動車を含めてピークの1990年の31%減の535万台である。主な原因は、年収200万円未満所得者の急増(2007年、1023万人)、国民貯蓄率の急落(2006年、3.2%)に表される構造的格差拡大により、生活必需品の車が買えない層が増えたことによる。加えて、高齢化や燃料費高騰等による車離れも副因である。

車を国民必需品とするこれまでの車一辺倒の社会は、新たなに、車を買えない所得層の増大や地球環境保全運動との矛盾が顕在するようになり、カーシェアリング、パークアンドライド、モーダルシフト、さらにコンパクトシティ(歩いて暮らせる街づくり:環境省)のような、適度な車利用を含むライフスタイル社会が提案され、試行されてきた。

国内の自動車販売台数の縮小傾向の中で、製造分野では、エコカー(燃費向上、排ガス低減、クリーンエネルギー車)、インテリジェンスカー(より安全・安心な車の提供)、福祉車(高齢化社会対応)等のトップランナー開発、普及競争が強まっている。さらに新分野開拓(たとえば、ロボット)への研究開発が加速されている。

国際的な競争激化、人材不足、外注化、効率優先等の諸要因が重なり、リコール件数が増大1990年:57件、2008年、310件)し、製品の安全がゆらいでいる。そして、派遣・請負労働、日系外国労働者が増加し、派遣、下請、外国人の処遇格差、不当労働、パワハラ等の人権侵害等が、社会問題化してきている。

国内市場の飽和、需要減の中、市場が拡大しつつある新興国・途上国でのモータリゼーションが温暖化をはじめ深刻な社会環境問題を生じさせつつある。

石油だけでなく鉱物資源の高騰・受給逼迫も自動車製造業の未来に影を落としている。地球温暖化や資源枯渇の観点から中長期的には脱石油が重要な戦略課題となっている。バイオエタノール燃料が食糧生産と競合する事態もみられる。( 業界別マテリアリティ検討の試み(自動車、電力、不動産業界) )

部品メーカーの対応

組の中で紹介されていたアイシン精機の生き残りをかけた闘争心に凄いものを感じた。電気自動車がこれまでの既存自動車メーカー関連以外からの参入を容易にしているポイントとして自動車を形造るその部品の少なさが挙げられる。

ガソリン自動車3万点に対して電気自動車の場合では約1万点もの部品が減ることになるらしい。エンジンはモーターに置き換えられボディーなども金属から軽いプラスチックへと変貌する。高熱を発するエンジンを搭載しないためというのが主な理由。

電気自動車だと今までのガソリン車よりも部品メーカーの数がうーんと減り、系列にとらわれることなく取引が可能になる。アイシン精機がトヨタから出された要求は危機感を背景に取引を変えようとしている舞台裏が描かれていてとても興味深かった。

トヨタからの注文はこうである。冷却水を動かすポンプの電動化への対応。そしてポンプの軽量化を実現するために金属からプラスチックへと変更してほしいとのこと。

開発担当者が集まり議論を重ね、いろいろな方向性を検討したところ「錆びない磁石」さえ手に入ればトヨタからの要求をクリアーできるかも、という結論へ到達。

とある企業を訪問するために広島へ訪れるがその会社も自動車関連メーカーさんからの問い合わせは初めてのこと。キャノンやソニーが主な取引先。これはアイシン精機も同じことで、自社との顧客関係500社近くに「錆びない磁石」を製造できないか問い合わせたけどどこの反応もダメであったと。これまでの会社の枠組みでは対応できないことを痛感する。

我々がやらなければ世界のどこかのメーカーが必ずやる。きっとやる! だから我々がやらなければいけない、ということをアイシン精機側の開発責任者が言っていたんだけど、なんかトーマス・フリードマン氏著「フラット化する世界」を読んでいるようなコメントでとても印象に残った。

まずはアメリカから

ヨタはエコカー生産のタイミングを見極めるために市場の分析とかにも忙しい。世界の自動車市場の4分の1を占めるアメリカ。ここで勝つことは世界で勝つための第1歩になると認識している。エコカー市場はいつ動き出すのか? 年間1000万台以上の車が売れるアメリカだが、ハイブリッド車のシェアはわずか2.5%に留まっている現状。

ある調査によるとどうやらジェネレーションY世代がエコ市場に大きな影響を与えるらしい。彼ら(現在)22歳から33歳ぐらいの年齢の特徴としてインターネットなどで環境問題にも頻繁に触れており、それらが心理的に購買スタイルにも影響、今のリセッションが終わるごろにはエコカーを購入してみようか、という状態になっている可能性が高いとのこと。

当初予定していたプラグインハイブリッドカーの法人向け販売を2010年に添えていたトヨタだがライバル会社、電気自動車関連の市場の動きなどに注目した結果、2009年12月に販売開始することを決定した。

プラットフォームになりたいトヨタの戦略

組の最後、トヨタが目指す次世代電池開発の様子を目にしたときトヨタの戦略に思わず震えてしまった。現在のリチウムイオン電池を越える性能を持つ電池の開発に取り組んでいる! なぜか?

電気自動車の心臓部、バッテリーを制するものが自動車革命を制するといわれているからなんだけど、トヨタの言い分はこうだ。電気自動車製造はシンプルになり、いろいろな業種からの参入も大賑わい、しかし、ある性能を寄せ集め、買い集めるだけの会社になってはダメだと。将来的にその会社は単なるAssembly Companyに陥っている可能性があると。

コアな部品であるならば自分たちでできるという状態の維持。これに拘るらしい! 素晴らしいと思った。トヨタは電気自動車市場でのサウジアラビアになろうとしているのだ。

優れたバッテリーさえ自社開発、製造、管理、販売などを手がけることができればその他多数存在するであろう電気自動車メーカーはトヨタバッテリー使用の電気自動車開発を目指すことになる。

石油という天然資源ではなく、日本人が得意とする技術開発なのだ。もしかしたらトヨタの戦略が実は一番確実で最強のものなのかもしれない。プラグインハイブリッドカーで勝負している間もクリティカルな情報の蓄積を絶えず行い、膨大なデーターからのフィードバックは次世代電池開発への確かな土台作りとなるはずだ。

自動車産業はどこへ行く、その2(電気自動車の未来、日産の戦略)へつづく

油価格が高騰して、アメリカ経済が落ち込み、ビッグスリーは経営危機。BRICS等新興国の販売市場は拡大し、世界の自動車製造会社が進出している。日本ではM字型社会到来のため中流層がいなくなりロウワーミドル、ロウワークラスに合わせた車社会へとシフトしてゆく。製造業などの現場では労働者問題が発生し、どのように解決していくのか?

新興国の連中が先進国と同じような生活スタイルを始めたら地球が悲鳴を上げてしまう! ちょっと待て、と。石油がなくなるのが先か、リチウムイオン電池などの技術革新が先か、社会はどちらへ的を絞って対応していったらいいのだろう? グーグルの戦略は凄いと思った!

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