自動車産業はどこへ行く、その2 – 電気自動車の未来、日産の戦略


リーフ(Leaf)

自動車産業はどこへ行く、その2 – 電気自動車の未来、日産の戦略

のエッセイではトヨタの戦略、プラグインハイブリッドカーなどについて書いたので今回は現在世界第7位という位置を占めている日産の戦略、電気自動車について考察してみようとおもいます。( 自動車産業はどこへ行く、その1 – ガソリン自動車の未来、トヨタの戦略 )

20世紀初頭の戦い

もそも電気自動車がなぜここへきて注目されるようになったのか? 時代背景を見てみると実は20世紀初頭に2つの技術的戦いが覇権争いを繰り広げていたことがわかりました。一つは電気自動車、もう一つはガソリン自動車です。すでにお分かりのようにフォード社が発表したT型フォード、Ford Model T、が量産体制に成功。ガソリンエンジンを搭載した自動車が一気に戦いを制しました。

その後の歴史はガソリン、つまり石油に振り回された人類とでも形容したいような内容です。大油田の発見に始まり、車社会のアメリカ経済は輝かしいものでした。そのアメリカ的なライフスタイルは人々の憧れとなり拡大していきます。世界がその豊かさを追い求め、日本も負けじとその豊かさを追求していったのです。

そしてベトナム戦争、石油危機などを経て、石油時代の行き詰まりを人々、社会は感じるようになり、ついには100年に一度という経済危機が現在の我々社会を脅かしています。地球温暖化、環境意識への高まりなどの後押しもあり電気自動車がガソリン自動車に再び戦いを挑む機会が訪れたのです。

日産自動車、電気自動車に社運をかける

2009年8月、リーフ(Leaf)という名の電気自動車を発表した日産。リチウムイオン電池は自社開発、充電1回で走行距離160キロ以上達成ということをアピール。ゴーン社長自ら、日産はこの車で量産を試みるんだ、と語っておられました。将来的には年40万台の生産を目標とのことです。(日産・リーフ)

どうして日産は、今量産をスタートするのか? 5、6年先、技術革新が起こってからスタートするのか? とゴーン社長が問いかけています。それでは遅いと! 日産は今がタイミングだと非常に強く認識しています。

その動きもアメリカで加速していて、当面は年間15万台の電気自動車生産を行うという目標を掲げ、それには街中での充電ステーションもたくさん必要になってくるであろうから、日産は各州、各自治体への設備投資を呼びかけます。現在では全米5つの州で1万箇所の充電ステーション施設設置を始める予定になっているそうです。

アメリカだけではありません。当然すぐお隣の巨大な市場中国にも目標を定めています。

13のモデル都市

国政府は電気自動車普及のため、13のモデル都市を設立しました。長春、北京、大連、済南、合肥、上海、杭州、重慶、武漢、長沙、南昌、深圳、昆明といった具合で、それらの都市では毎年1000台の公用車を確保する予定であり、充電ステーションなどの設備も充実させていく模様という意気込みです。

日産はモデル都市の一つ、武漢市の政府関係者を招待してテストカーに試乗してもらい、性能をアピールしていました。日産としては中国の巨大マーケットで日産が社運をかける電気自動車を量産するリーダーになりたい! という大きな達成目標があるからです。

日産、中国進出のもう一つの理由

気自動車の仕組みは単純なもので、モーターとそれを動かす電池がありさえすればとりあえずは動くという構造です。ここで重要になってくるのがそのモーターと電池を製造する資源。電気自動車の生産に欠かせない資源の確保が大事な戦略になってきます。

もちろん資源に乏しい我が国日本にはそれらの原料、リチウム(リチウムイオン電池)、レアアース(永久磁石モーター)を得る手段は海外の豊富な資源大国に頼るしか道は無いわけです。中国はそれらの原料の資源大国なんです。

当然、したたかな戦略を目論んでいる中国政府、それらの資源輸出を制限し始めます。中国万鋼科学技術相の経歴を見ると明らかにその資源確保の重要性を理解しています。ドイツ自動車会社技術者を経て、中国技術系大学学長、現在は電気自動車産業を指揮する重要なポストについています。資源大国中国は電気自動車開発に有利であると。

中国のしたたかな戦略

海にレアアース鉱山との繋がりに近いある電動モーターメーカーが存在しています。上海電駆動という会社なんですけど、そこの社長貢氏の元へ日産の中川副社長が訪問します、資源の安定的な確保の手がかりがほしい、と!

実はこの貢社長、万科学技術相の教え子でして、国との太いパイプの持ち主でもあります。当然日産の足元もしっかり観察していることでしょう、次のように中川副社長に話を持ちかけます、曰く“日産が電気自動車に関する先端技術を提供するならば、協力しましょう”、と。中川副社長の複雑な心境が表情に出ていたのが印象的でした。

どうしてかというと日産は中国本土で同じようにモデル都市での争奪戦を繰り広げるであろうライバルの存在を知っているからです。

走行距離300キロ、数字の上では日産の2倍

年行われた上海モーターショーで中国の新興起業モデルの存在を日産は目にします。深中国広東省深圳にあるBYD(比亜迪汽車)という名の会社で従業員数13万人、スモール・ハンドレッドの中では目立つ存在になってきました。

自動車メーカーに参入してまだ6年ですが上海モーターショーで発表したBYDの電気自動車F6は走行距離300キロとのこと、数字の上では日産の2倍です。これに驚いた日産側はすぐさま広東省深圳のBYDへ視察、王伝福(ワン・チュアンフー)総裁と面会します。

早速F6の試乗を許された日産幹部からは驚きの動揺が隠せない様子。始めは走行距離300キロという数字を出すには相当のバッテリーを搭載しているはずだ、よって車重が重くなり日産からしてみればそんなものは車でないとまで言っていたのです。

しかし、実際に試乗してみてどうでしょう? 電気自動車特有の加速を体験、完成度はまだまだ日産の技術には及ばないものの、追いついてきているなぁ、という印象を受けたようです。気になる販売時期の質問を聞いてビックリ!

BYD、2009年年末スタートに対して(法人向けか個人向けは未定)、日産はなんと再来年スタートという事実。今現在は日産の技術には追いついていないものの果たして2年も技術的有利性を日産は保てるのだろうか? という雰囲気が日産の幹部から伝わってきました。BYDは明らかに日産の威嚇であるからです。

充電なしで東京―大阪走破

電気自動車(EV)を途中で充電せずに東京―大阪間を走り抜く試みに17日、愛好家らでつくる「日本EVクラブ」(東京)が挑戦し、完走した。555.6キロの走行距離は世界記録となる見込みで、同クラブはギネス記録に申請した。

17日午前3時に東京・日本橋(にほんばし)を出発、高速道路と一般道を乗り継いで同日午後4時26分、大阪市の道頓堀に近い日本橋(にっぽんばし)に到着した。高速では時速80キロ前後で走行したが、同クラブによると、最高速度は理論値で145キロだという。

車はダイハツ工業の軽自動車ミラを改造した2人乗り。エンジンをモーターに置き換え、単3乾電池より一回り大きな三洋電機製の円筒形リチウムイオン電池8320本を充電したうえで1040本ずつ8パックに分け床下や座席下に載せた。改造は三洋の協力で同クラブが手がけた。

次世代車として期待されるEVは、電池容量の制約を受け、充電1回で走れる距離がガソリン車より短いことが課題とされている。今回搭載した電池の重さは計360キロに達するが、電池さえ多く積めば長距離も走れることを実証した。車の総重量はもとの4割増の約1060キロ。(和気真也)( 電気自動車、充電なしで東京―大阪走破 )

上の記事は電気自動車に関連するニュースですけど、他にも電気自動車に関連するニュースとして特筆するものを挙げておきましょう!

南米の最貧国ボリビア、天然資源・リチウムの争奪戦

南米の最貧国ボリビアで、日本も含む主要国が、次世代環境技術のカギを握る天然資源・リチウムの争奪戦を繰り広げている。電気自動車などに使われる充電池の原料がアンデス山脈の秘境「ウユニ塩湖」に未開のまま眠っているのだ。その量は世界の埋蔵量の半分とも言われている。

各国が競ってボリビア政府にすり寄るのは、モラレス大統領が2013年にリチウムの商業生産を開始し、18年には自動車用リチウムの生産工場を国内に建設する構想をぶち上げているためだ。大統領は「資金・工業化の両面で海外のパートナーを探さなければならない」と各国をあおっている。読売新聞 11月8日

仏ルノーと日産自動車は6日、仏原子力庁、政府系ファンドの仏国家戦略投資基金(FSI)と共同で、同国に電気自動車用電池の開発、生産を手掛ける新会社を設立すると正式発表した。6億ユーロ(約820億円)を投じ、2012年に電気自動車で年10万台分の能力を持つ新工場を建設。

ルノーのほか、他の自動車メーカーに販売する。工場はルノーのフラン工場内に建設。高性能のリチウムイオン電池を生産し、まずルノーの電気自動車に搭載する。日本経済新聞 11月7日

電気自動車の動力源などとしてリチウムイオン電池の需要が急速に拡大していくとみられることから、化学や鉄鋼といった素材メーカーの間では、これまでに蓄積した技術を生かしてリチウムイオン電池に関連する事業に参入する動きが相次いでいます。

「東レ」は、リチウムイオン電池に関連した事業を行っている「東燃ゼネラル石油」のグループ会社に出資する形でこの分野に参入し、フィルムやプラスチックの加工技術を生かして電池の発熱を防ぐ材料の開発や製造を進めていくことにしています。

また「三菱化学」は、リチウムイオン電池の材料に使われている高価な金属の割合を減らす技術を確立し、先月から量産を始めたほか、「住友金属工業」も、グループ内で手がけてきたリチウムイオン電池の材料となる黒鉛や合金などの製造部門を集約し、事業の強化を目指す方針です。NHK 11月9日( 10秒で読む日経メールマガジン参照 )

景色を保存しろ=貧しいままでいろ!

ウユニは西はチリのアンデス山脈、東はアルゼンチンのアンデス山脈にはさまれた富士山頂の高度にある乾いた盆地。地球誕生から何十万年もの間、東西のアンデス山脈に降る雨が、塩分だけでなく地中のミネラル含めて流れ込み、盆底にたまり、乾燥して白い塩だけが地表に積もっていった。

一番底からカウントすれば塩湖の表面まで数百メートルもの塩が積み重なっっている。表面は全く水平なので、塗装道路のようだ。流れ込んだミネラルの1つがリチウムで、ウユニの場合、時間をかけて塩のなかにかなり含有されているので、抽出が楽な鉱山となる。

世界のリチウム年間利用量は2.5万トンで今はウユニの近所の塩湖からとれるチリが3割強を産出している。記事にあるとおり、自動車向けの電池需要が急増しており、需要は急増し世界中で争奪戦がおきている。よって、リチウムを制したものが、電気自動車争いに勝つとも言われる。

ウユニの埋蔵量は世界の埋蔵量の半分の540万トンとみられているので権益を取ろうと世界中が虎視眈々なのだ。ここで産出が進めば、世界一の絶景のウユニ塩原の景観は一変する。あの素晴らしい景色が見られなくなるのだ。自然に優しい電気自動車が、世界一の絶景を滅ぼすとは皮肉だ。

しかし、ボリビア国民にすれば、いまだに所得がかなり低いので隣国チリのように鉱山収入で国民を富ませることが切実な願い。景色を保存しろと言う事は、おまえらはずっと貧しいままでいろと言うのと同じことでもある。正しい答えの出ない問題だ。( 10秒で読む日経メールマガジン参照 )

スモール・ハンドレッド

圳中国広東省にあるBYD(比亜迪)のお話を出したところでスモール・ハンドレッドという言葉が登場しました。中国の自動車市場は将来的に誰が見ても巨大マーケットに変貌することは明らかです。その市場のシェアを一つでも多く収めようと既存の各大手自動車メーカーは中国に進出していることは皆さんご存知の通り。GM、フォルクスワーゲン、日産自動車、トヨタ、ホンダと各社戦略も様々です。

この既存の自動車会社からなる層、ピラミッドで言えば頂点付近の三角形はそれらの大手自動車会社で占められているのが現状なんですけど、どうやらその下の階層に今次々と電気自動車メーカーが誕生しているようなのです。

電気自動車の構造がシンプルであることから参入してくるメーカーが後を立たない状態なんですけど、ここで凌ぎを削っているメーカーをスモール・ハンドレッドと称していて、中国7億人の農村部、所得の低い層がターゲットだそうです。

ニュートラルって何?

国山東省高唐にある小さな電気自動車会社が紹介されていたんですけど、従業員は皆農民上がりで自動車作りなど経験したことの無い人ばかり。見よう見まねで創り上げた電気自動車の最高時速は40キロで価格はおよそ13万円という安さ。これならば貧しい農村部の人でも手に入るだろうとのことで電気自動車普及の要因になっているそうです。

中国政府にしてもまだまだ法規制の整っていない分野であり、自動車免許いらない、ナンバープレートいらないということで農村部での普及の勢いは凄まじいものです。ある農民が試乗しているんですけど、その男性が発する言葉が印象的でした。“ニュートラルって何? 雨でも風でも大丈夫だね”、と、嬉しそうに!

ヨーロッパ進出へ

う1社、紹介していたのが中国山東省にある山東宝雅という電気自動車会社。元農家が起業したらしく、現在従業員20人、月100台生産にまでなるのに3年かかったそうです。社長は張氏、2年前に設立し車種(FLYBO)は12まで増やしました。

この山東宝雅という会社の中に日本からの技術者がいるんです。名前は後藤さん、現在は70歳でかつてはホンダやヤマハで技術者の経験者を経てきたそうで、山東宝雅で製造過程における技術面での支援を行っているとか。

後藤さん、山東宝雅のある街中を歩いて紹介するんですけど、そこは電気自動車が育つ環境が整っているそうです。数百件の物品市場、安い価格と豊富な品揃えに加え、後藤さん自身が働いている会社の若い工員たちの熱気を感じていると、かつての自分たちを思い出すそうです。浜松と一緒じゃないか、と! やる気満々の人が多いと語っていました。

番組では調度ヨーロッパ進出への足がかりができたということで試作品をオートショーへ出すための準備に追われていました。高速道路走らない、街乗り自動車としての採用が認められようとしているのです。

自動車産業はどこへ行く、その3(電気自動車の未来、シリコンバレーの戦略)へつづく

大消費社会へと変貌を遂げる中国のマーケット。そこで繰り広げられる新たな自動車革命。既存のガソリン自動車が勝つのか、電気自動車が新たな産業として自動車産業のあり方そのものを変えてしまうのか?

日産が追いかけるもの、日産が中国でどのような戦略を試みようとしていて、そこに中国政府がどのように関わっているのか? 日産のライバルの動き! リチウム、レアアースといった資源の確保は世界レベルで発掘、確保されるようになり、電気自動車の構造がシンプルであることから様々な新興起業が参入、たいへんな競争を展開しようとしています。

中国市場はもちろん、ヨーロッパ市場も狙っている中国のスモール・ハンドレッド層。中国市場と似たようなマーケット、アメリカでは今何が起こっているのかを次に考察してみようと思います!

, , , , , , , , , , , , , , ,

Powered by WordPress. Designed by WooThemes