アメリカへ来たばかりの頃の通信事情
アメリカに着たばかりの頃(1988年)の日本との国際電話にはエコーがかかっていた。まだ海底ケーブルが完全に海底を走る前の話である。それからあるとき突然、国際電話にエコーがかからなくなり、お互いの声がとても近いものに感じるようになった。
インターネットを始めて体験したのはいつ頃だっただろうか? ロサンジェルスにいた時のルームメイトがコンピューターに詳しかったので、その手ほどきを受けたのが確か1995年ごろだったと思う。ネットで繋がった人同士でお話したり、ウェブというものなどを体験した。
日本のニュースなどは日系書店へ出向いて新聞や雑誌などで仕入れるしか方法がなかった。そしてニューヨークへ移り本格的にインターネットを始めたのが1998年ごろ。日本のニュースサイトを見て情報を手に入れることがこんなにも簡単になったと思い喜んでいたのを覚えている。
だがほとんどの情報が活字であり、映像などの情報はケーブルテレビなどを利用してわずかな時間しか流れない日本の民放の放送を見るか、 NHK の TV ジャパンなるものを支払ってみるか、日系の食料品店へ出かけて日本から送られてくるビデオを借りてみる以外は選択肢がなかった。
僕もお笑いや音楽番組、スポーツ中継などのビデオを借りていたが、今ではサッカーの日本代表のビデオぐらいしか借りなくなってしまった。
そう、 iTunes Store と YouTube がとても便利な世界を提供してくれるからだ。
YouTube との出会い
初めて YouTube を利用したのは今年に入ってからだ。アメリカのサービスなのに日本からのアクセスが非常に多い、というなぞにも興味を引かれた。
本来の目的は自分で自分自身をブロードキャストしてしまえ、というものだが、ほとんどの人が利用している目的はテレビなどで見逃したシーンや手に入れることができない映像などを YouTube で検索して観覧しよう、というのがほとんどだと思う。気になるニュース番組のシーンやスキャンダル関係、スポーツなどのハイライトは YouTube でだいたい拾えるようになっている。
今年だけに限っていえば、亀田三兄弟、極楽とんぼ、日本の新しい芸能人、夏の全国高校野球、サッカー日本代表の得点シーンなどあげればもっとあるが、これらの映像を見て実際リアルに情報を見ることができた。
昔だったらビデオを借りるか日本のニュースをみて運良くそのシーンに当たるかしかなかった選択肢が、 YouTube へいけばあるだろうという期待感に変わり、特に話題の情報はまだ新鮮な間に YouTube へ行けばだいたい拾える。
ついこの前、日本の放送業界が YouTube へ著作権に関わるすべての映像(約3万件)を削除するように申し入れ YouTube 側がこれに応じ、大量の映像が削除された。
しかしその後もユーザーからの投稿は収まってはいない。番組そのものの投稿はさすがに見当たらないが、これもまたいたちごっこだろう。いくら日本の放送業界が規制をかけたところで、この流れを止めることはできないと思う。ちょっと昔に音楽業界で起こったことを忘れてしまったのだろうか?
最近では各テレビ局に YouTube の動画の監視・削除要請などを行う専任監視部隊(主として編成や著作権・ライツ関係の業務を行う専任部署、またはスカイアンドロード社ほか番組制作会社の関連会社など)が設けられている。度々の申し入れをせざるを得ない社(例:: NHK 、日本テレビ、 TBS 、フジテレビ、テレビ朝日、 MBS 、 ABC 、関西テレビ、 ytv 、東海テレビ、メ〜テレなど)に対しては、専用の申し入れフォームが作成送付されている。
特に TBS に至っては、「視聴者サービス部宛メッセージフォーム」に YouTube 上での TBS 番組の無断アップロード(=著作権侵害行為)の件について通報すると通報した翌日から数日中にかけファイルが TBS によって削除されるようになっている。また、 TBS はほかの動画共有サイトにある動画の削除の対応にも強化を入れている。例えば、以前は女子アナの名場面などの多数のコンテンツがあったが、テレビ各局により現在は視聴できない状態である。もちろん、番組自体をアップした場合短期間で削除される。
また視聴者側への警告として、例えば BS-i の深夜アニメ放送では冒頭にインターネット上に動画をアップロードすることは著作権の侵害であるとの旨のテロップが流れている(ただしこれは YouTube が開設される以前( ファイル交換ソフトによる著作権侵害が蔓延しだした頃)からの対応)。現在でもシリーズによっては流れている。
2006 年、スペースシャワー TV 、 MUSIC ON! TV なども削除依頼を提出している。しかし、番組映像の二次流用が後を絶たない。例外的に、 TOKYO MX の一部の番組についてはアップロードが黙認されたケースがあった(詳細は談志・陳平の言いたい放だいを参照)。また、海外のテレビ局( BBC など)の対応は比較的寛容である。
2007 年 1 月 25 日から放送番組の違法流通を防止するため「放送コンテンツ適正流通推進連絡会」が発足した。ここでは YouTube 上での番組無断アップロードも監視の対象としているため、今後ますますテレビ局や著作権関係団体による動画の監視・削除要請が激しくなることが予想される。
そのため、 2007 年 2 月 6 日にチャド・ハーリー CEO と親会社の Google の幹部が来日し、日本の著作権団体らと会見。 Google と相談し、日本側が提示した登録者に対して個人情報登録をさせる件については難色を示したものの、違法動画をアップロードすら出来なくなる技術を開発することと、日本語での著作権に対する警告文を表示すると約束した。また今後も日本の著作権団体と YouTube と Google の三者で話し合い調整する予定である。
ユーザーの間で最近では、タイトル、動画の説明やタグを動画の内容にまったく関係ないことを書いたり、タイトルをギリシア文字で書くなど、検索ではなかなか見つからなくし、削除されないような対策をとっている(購読しているユーザーのみがそれらの動画簡単に探せるようになっている)。また、 YouTube では簡単に削除されることを知り、ほかの動画共有サイトにアップロードすることが増えており、問題にもなっている。
アップル社の iTunes Music Store
Napster というファイル共有ソフトが無料で爆発的に広まり、自分のコンピューター内に入っている音楽を世界中の人と交換できるソフトのお陰で音楽は無料で手に入れるもの、という感覚が多くの人々の価値観を変えた。
その後、 Napsterは音楽業界などから訴えられたが、一度無料で手にできるという体験をした多くのユーザーがタワーレコードなどで CD を購入することなどに興味を示さなくなっていく。そこで登場したのがアップル社の iTunes Music Store であり、 iPod という携帯音楽プレーヤーだった。
無料でダウンロードして違法だととがめられるのはちょっとねぇ、という雰囲気と音質もいいものから劣悪なものまであるという安定した供給ではなかった環境に、1曲1ドルぐらいなら安い、ということで一挙に iTunes Music Store は受け入れられていった。
ある程度の音質も保障されていて、合法で手に入れることができ、その上安く自分がほしい曲だけをダウンロードできる、となればユーザーの支持を得ることは当たり前のことだったのかもしれない。
それをタイミングよく提供できたアップル社がついていたのか、それともウォークマンやミニディスクというスタイルにうぬぼれていたというか危機感のなかったソニーのお陰なのか、どちらにしてもユーザーにとっては音楽が一段と身近になったことはとても嬉しい。
映画の販売からテレビ番組の販売へ
話を元に戻そう。映像の世界でもこれと同じようなことが必ず起こるであろう、それも近い将来に。日本の放送業界は YouTube などとはかかわりたくない、と思っているだろうが、遅かれ早かれテレビなどのアーカイブをとても安い値段で提供してくるサービスが出てくる。iTunes Store は映画の発売を始めたがテレビの番組の発売もその内きっと始めるに違いない。
実際ドラマなどはすでに購入できるし、その内スポーツチャンネル専門の ESPN がいろいろなスポーツのアーカイブを販売したり、ディスカバリーチャンネルやナショナルジオグラフィックチャンネルなどのドキュメンタリーは DVD ですでに販売しているが、 iTunes Store からでも購入できるようになるであろう。
MTV もアーカイブをたくさん抱えているし、他に歴史、サイエンス番組から旅行、料理などの人気番組なども安く購入できるようになる。
日本の放送業界も独自で発信するところとかがでてきそうだが、どうなることか? 音楽業界も日本では未だにアップル社とは契約しないでいるところもあるだろうが、 iTunes Store へのアクセスが一番多く、そこで音楽もビデオも映画もテレビも購入できるとなったらユーザーはそこへ集中するのではないだろうか?
眠っている価値のある番組をある程度の料金を払うことでたくさんの人にまた見てもらうことは非常に意味のあることだと思うがいかがであろうか?
それによってその放送に関わった人たちに著作権料などの支払いがきちんと行われれば、そこで新しいお金の流れが発生するし、作る側のインセンティブも上がると思うのだが。
日本のコンテンツ、海外での認知度
著作権法によって保護されているコンテンツ、例えばテレビ番組やプロモーションビデオなどが違法に多数アップロードされていることが問題点として指摘されている。 YouTube は利用規約で著作権侵害になるファイルのアップロードを禁止しているが、違法コンテンツは後を絶たない。
しかしながら、日本のコンテンツの海外での認知度が高まり、日本国内でも新たな文化的刺激につながる可能性があるなど、悪い面ばかりでないとの指摘もある。いずれにせよ現状ではそれらの行為は違反であることに変わりはないが、海外のファンは違法行為に頼らなければ日本国内のコンテンツを鑑賞する機会 が大幅に失われることもあり、映像コンテンツの合法的なインターネット展開の活発化など、新たな視野での方向転換を期待する人もいる。
著作権問題は GUBA ・ Veoh ・ MEGAVIDEO や DivX を利用する Stage6 など他の似たサービスでも問題となっている。こちらは YouTube ほど有名ではないため野放しの傾向にある。
加えて、問題をはらむコンテンツ ― そのうちでも特に J-POP やヒップホップの音楽映像 ― を YouTube にアップロードしているユーザーは日本国外(特に欧米諸国)の者であることも多く、これに対して著作権についての意識のギャップの存在が指摘されることがある。
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