What's up, Japan?, アメリカの行くへ - Written by B-KOOL on 木曜日, 1月 3, 2008 21:26 -

前に進む意志 – アパラチアン・トレイルに挑むものたち

アパラチアン・トレイル

新年明けましておめでとうございます。

去年大晦日に、NHK特集でアパラチア山脈を南北に走るアパラチアン・トレイルについての特集を見ました。アパラチアン・トレイルとはアメリカ東部のジョージア州からメイン州にかけての 14 州にまたがる約 3,500km の長距離自然歩道です。

この3500キロを約6ヶ月かけて踏破することをスルー・ハイキング( thru-hiking 、トレイルの全区間を 1 シーズン内に踏破すること)というそうで毎年、約2000人が挑戦するそうです。

このアパラチアン・トレイルに参加している人はさまざまでいろいろな人々に出会うんですね、その取材中に。

自分探し、人生をリフレッシュ!

大学の教師が3週間の休みを利用して都会を離れ、孤高な環境に自分を置くために毎年決まったセッションを歩きに来る人。

世界第2位のインターネット接続会社に勤めていたあるエリート男性。彼は柔道でも活躍し文武両道をこなしていたが、肩の怪我から柔道ができなくなり、それをきっかけに仕事の面でもうまくいかなくなっていく。その内にうつ病になったりして会社を6週間休んだりしちゃうんだ。

結局、彼はその仕事をやめてこのアパラチアン・トレイルに参加して、新しい何かを探すつもりらしいんだけど、それがマイペースでいいんだなぁ。このアパラチアン・トレイルを始める前、家や車を売って、すべてを捨てて参加してきた。

それまで毎日、抗うつ薬を8ヶ月近くも飲み続けていたらしいんだけど、「このトレイルに参加してからの2ヶ月の方がよっぽどうつ病治療には10倍もいいよ」、と語っていたのが印象的。毎日森の中ではスナックだけで過ごし、気分が向くと近くの町へ降りて文明生活に触れるという気分転換をしていたり、なんかあせって探し物をするより、今という人生の節目を楽しんでいるようでね。「僕は人生の一番どん底までいったからこれからはあがっていく人生しかないだろう」って。かならず前へ進める、というオプティミズムを感じるんだよね。

ちょっとハイキングへ行ってくる!

自分探しが止まらないもう一人の男性はボストンから来たコンピューターネットワーク関係のプロであった人。雇われた法律事務所のネットワーク関係をアップグレードする仕事を任されていたらしい。しかし、全部のネットワークが最新のものに変わった瞬間に会社から解雇された。

仕事を失ったショックからこれからどのようにして生きていこうか、その問いをみつけるためにある晩、ディナーを一緒にとっていた妻を目の前にして彼が打ち明ける。

「ちょっと元気を取り戻すためにハイキングにいってくる。」

「あら、そう、何時ごろ戻ってくるの?」

「多分、6ヶ月ぐらい先。」

それから妻は2人の子供を育てながら、パートの仕事をしたりしてなんとかやりくりし始める。

旅の最後のほうで彼の住んでいるボストンから一番近い場所で3ヶ月半ぶりに家族と会う約束をするんだけど、なんかよかったね、その瞬間。彼なんかひげもぼうぼうだし、髪の毛とかも手入れなんてしていないから乱れ放題で。それから3日間、コテージを借りて久しぶりに家族で過ごすんだ。

彼はこの旅の間中、「ほんと妻に感謝する気持ちが強くなった」と打ち明け、妻は「大変だったけど母親としての自信がついたわ」、みたいな話をするんだよ。

そのほかにも朝鮮戦争退役軍人の人、半年前 前立腺癌の手術を受け、今は元気な様子でアパラチアン・トレイルに参加している60代の男性。

アパラチアン・トレイルでは少数派の女性もいて、出会ったその女性は23歳であった。集団で参加している少年たちもいた。みんななんらかの犯罪を犯してしまった少年たちで、裁判所の命令で30日間集団でこのアパラチアン・トレイルに参加することを命じられたらしい。

その集団を引率する人が語っていた。「都会で育って、都会しか知らない少年たちは、こういう自然の中に放り込んでやるだけでいいんだ」と。「きっとそこから何かを見つけるはずだ」とね。一日中歩きっぱなしで日が終わるとみんなで夕飯をたべて、というのを30日ぐらい毎日続ける。

最後まで歩ききる人は全体の中で10%

大体アパラチアン・トレイルに参加している人は一日20キロぐらい歩くペースらしい。ある感覚で休憩所も設けられており、1週間に一回は食料などを調達できるようにアパラチアン・トレイルのところどころに街もあり、ボランティアなどもいて多くの参加者をサポートしている。

それでも毎年挑戦する約2000人の中で、最後まで歩ききる人は全体の中で10%という厳しさ。途中の街で休憩するんだけど、あまりにもきつい森の中での生活に戻るのが苦痛でずっと街で休憩し続けて脱落していくひとも多いらしい。

ある街でボランティアでハイカーが泊まるところを提供している場所の世話をしている夫婦の話が印象的だった。

「このトレイルに参加してくる人はみんな人生の節目を迎えている人ばかりなんだ。ある人は大学を卒業したり、仕事を引退したりと。またある人は失業したり、離婚したり、とね。ここに来た時点ではひとそれぞれその人の人生において立っているポイントは違うけど、みんなに共通するのは何か新しい方向性を模索しているんだよ。」

なるほどね。散歩とかしていると右脳が活発になるっていうでしょ。やっぱり森の中を毎日歩いて生活していると、脳が活性化してきて覚醒される瞬間がだんだん大きくなっていくんだろうな。

みんな小さな音とか小さな動物の動きとかに敏感になっていくんだよ。森の中に溶け込んでいくというか、5感が研ぎ澄まされていくんだろうなぁ。考え続けることはいいことだと思うよ。たとえ、そのアパラチアン・トレイルをすべて歩き終わっても答えが出ていないとしてもね。十分にある何かをもってものすごいことをその人は達成したんだから。

前へと進む意志

自分探しの哲学―「ほんとうの自分」と「生きる意味」僕はそのNHK特集を見ながらずっとあることを考えていた。前に進む意志、毎日毎日、少しずつでもいいから、小さい積み重ねでもいいから前へ前へと進む意志。

そういう意志を強烈に持ち続けることが必要だろうなぁって思いながらみていたんだよね。そういうのを積み重ねていくとある時点で自分がたどってきたもの、積み上げてきたものを振り返るとき、ある大きさになっていてびっくりすることがあるんだよ。

集団で生活してきたある少年が地図を見ながらいうんだ。「こんなにすごい距離を歩いてきたのかなぁ」、って驚いているんだよね。そういうときってさぁ、よく頑張ってきたなぁとかって思うじゃん。

はだしで苦行

その特集ではもう一人、ある男性が出てくるんだけど、その人はベトナム戦争で仲間を失ったショックからずっと立ち直れていないんだ。自分だけ助かってしまった罪を感じて、仲間が受けたであろう痛みを忘れないために、ベトナム戦争以来ずっと、 35 年間もはだしで生活してきたんだよ。

そんでそのアパラチアン・トレイルにもはだしで苦行を行っているんだ。足とか爪なんてぼろぼろでね。ずっと 3500 キロ、はだしで歩いてきたからね。過去の仲間にざんげする気持ちでいっぱいで、はだしで生活していたのは自分が注目されるため、すべてが自分のエゴから発生していたと。

だけど、現実を見るとベトナム戦争が終わってからもなお生き続けて苦しんでいる多くの人がいるではないかと気づくんだよ。自分の気持ちを癒すなんて甘えたことを言っていないで、その苦しんでいる人たちを助けるべきじゃないかと。

戦争に参加して、その後、精神的な苦痛を強いられている多くの兵士に対して国はサポートするべき、という運動を起こして、その運動が注目されるためにこのアパラチアン・トレイルをはだしで参加しはじめたらしい。内側に向かっていた意識が、外へ、他人へという思いやりの心が発生していくんだよ。

3500 キロを歩き終えたときに、その人が語るんだけど、「人間はなんでもできるんだ」って。「前に進む意志」という言葉をその人から聞いたとき、あぁ、またすばらしい偶然とであったなぁと感じたよ。

すばらしい偶然

みんなに共通するのは何か新しい方向性を模索しているんだよ

こういうときにいつも思うんだけど、自分は生かされているんじゃないかとね。ものすごい錯覚だけど、何か自分が達成するため、それを持って社会に、人類に貢献するために苦しい困難を仕向けられているんじゃないか、と思うときがあるんだよ。

前へ進む意志 、今非常に意識しているな。人間はすべてのものに対して素直な状態で心がオープンなとき、いろいろな感動に出会えるんだ。僕はそういうの、得意だよ。コツがあってね、教えちゃうけど、出会った瞬間に必ず感謝するんだよ。「あぁ、このすばらしい瞬間に出会えたことに対して、ありがとう」ってね。

僕は宗教とか持ってないけど、いいだよ、誰に向かってありがとうと感謝しようがさ。ただそういう姿勢を保っていると、感動する瞬間のほうが、もっとこいつを感動させてやろう、って向こうのほうから来るようでね。

素直にありがとって、この一年もね!

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