What's up, Japan?, 今の日本って大丈夫? - Written by B-KOOL on 火曜日, 1月 22, 2008 0:47 -
NHK特集「ワーキング・プア3」を見て、その1
岩井拓也さん
NHK スペシャル「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない」
一番最初のシリーズをみて衝撃的だったのは、自分と歳がある程度近い年齢の男性が、東京池袋で生活している様を見たときだった。
岩井拓也さん(仮名・当時 35 歳)はゴミ箱をあさり、雑誌を見つけては売って、わずかな収入で生活していた。自ら家族や社会とのつながりを断ち切って生きていて、観ていてすごいショックを受けたのを覚えている。
雑誌をゴミ箱から見つけたときの安堵感、「今日はこれで大丈夫、400円になるからね、ゆっくりできる」と笑顔で答えていたのが印象的だった。そのわずかな収入を食事代に当てるんだけど、コンビニでカップ麺の焼きそばを買うんだ。もうほうばるようにしてあっという間に食べ終わってしまう。「雑誌を探すのに何時間もかけて、これを食べるのはほんの一瞬で終わってしまうんだよね」と語っていた。
そして岩井さんが言うんだよ、「生まれてこないほうがいいって強く思っちゃってて、社会で生きていこうとしたら、なんかこう、人に認められないといけないっていうか。それよりも自分独りで生きていこうとか。そっちの方向に考えていく。人を信用しなくなっていく」ってね。
今回のシリーズ3部目であの岩井拓也さん(仮名)がまた出ていた。あの取材の時から約1年半ぶりに再会したときには、ホームレスの仲間と一緒に、東京三鷹市が提供する道路掃除などの市役所仕事の職を得ていた。日当7000円で、1ヶ月約7万円の収入が得られるまでになったらしい。
仕事にも慣れてきた岩井さん、最近では近所の人にも顔を覚えられ始めている。
「通る人が声をかけてくれて、“ご苦労様”とか、なんかそういう暖かい声があるからね、やっぱこういうほうがいいな、雑誌のときはなんか白い目で見られていたから、これの場合はさぁ、差し入れとかしてくれる人もいるし、やっぱちゃんとした仕事なんだ。」
働くようになって岩井さんの生活にも変化が現れる。仕事を終わったあとは店に入って食事をするようになる。
「すいません、ライス、大盛りにしてもらえます」といって出てきた定食のほかほか炊き立てのご飯をおいしそうに口に運ぶ岩井さんが印象的だった。雑誌拾いをしていたころは一日一食というのも珍しくなかったという。
公衆トイレの洗面所で体を拭くことしかできなかったが、今では2日に一回の割合で銭湯に通っている。ホームレスになってからずっと人目を避けてきたが、すこしずつ社会との繋がりを取り戻そうとしている。
僕が見ていてすげーな、こいつ、と感心してしまったところがあった。岩井さんが仕事のない日、新宿でホームレス支援の炊き出しを手伝っているんだよ。そこですげー、と思った場面に出会う。
弁当がほとんどの人々に行き渡ったころ岩井さんはやっと自分の分をもらいに行くんだよ。だけどねぇ、最近仕事がなくて困っている同じ池袋の仲間を見つけると自分の分をその人に上げちゃうんだよ。
「みんなとつながるというか、辛いときは辛いとか、こうして欲しいときはこうして欲しいといえるのがいいんじゃないかなぁ。やっぱり、独りでいて全部できるというのはないからね。やっぱり人との関わりというのは切らさないほうがいいかなぁ。」
道路掃除の仕事、三鷹市との契約は80日と決まっていた10月の半ば。最後の日にグループの年長のリーダーと一緒に市役所に向かうんだよ。
下半期の仕事も再び請け負わせて欲しいと頼むためなんだけど、グループのリーダーが言うんだよ、若いし責任もあるこの若い人に自分の役割を任せて行きたいと市の担当者に頼むんだ。
「よろしく頼みますね」と市の担当者から岩井さんに向かって言われたときの岩井さんの嬉しそうな表情が忘れられない。また下半期の仕事も任せてもらうようになるんだけどねぇ、道路掃除を始めた今も帰るところは高速道路のガード下だったよ。
最後にインタビューの人が「以前『生まれてこなければよかった』と言ってましたが……」と岩井さんに問うんだけどね、この場面は印象的だったよ。
「いやー今もまぁ基本的にはそういう気はある。やっぱり今の間々っていうのはまだこう全面的に誇りを持って出せる姿じゃないからね、やっぱりちゃんと社会復帰してから、生まれてきてよかったり、生きててよかったってなるんじゃないかなぁ。」
その瞬間、岩井さん、うつむいて目頭を押さえて泣き始めちゃうんだよ。
うぁー、こいつ平気なように振舞って笑顔で答えていたりしたけれど、心の中はめちゃくちゃに、ぼろぼろに傷ついていたんじゃん、って思ってね、かわいそうでかわいそうで仕方がなかったよ! 顔を上げて、こう切り出すんだ。
「まぁ、普通の人間としての感情が戻ったんじゃないかなぁという感じで。前だったら絶対泣かない。やっぱり人を信じれるようになって・・・」
ってこの瞬間また泣き出しちゃうんだよ! いやー、かわいそうでかわいそうで、こっちも目頭に涙が浮かんできてね、こいつはすげぇーよ、って思ったよ! こういう人たち応援したいよ、僕は。
僕は基本的に最初から甘えてくる人間は好きじゃない。当たり前のことを当たり前にやって、尚且つ当たり前に人間らしくその人が精一杯やっていてがんばっているならば、そこで初めて自分がその人にできることがあったら手を差し伸べるけれど、それ以前の問題という人もいるんだね。
そういう人は助けてあげないと。何気ない日常にもたくさんある感動すら知らずに人生をやり過ごしてしまうとかわいそうだよね。
「まぁ自分みたいな人間もいっぱいいると思うから、その気持ちはよくわかるから、手助けしていきたい、一人でも多くね。」
こう語った岩井さんの目には強い覚悟の意志を見てとれた。生気が蘇っていたんだ。
鎌田キャスターも「 ワーキングプアの最大の問題は社会とのつながりを失い、人間としての尊厳までも失うことだ」とのべている。ほかに番組では日本より非正規雇用者の割合が高い、悲惨な韓国の状況を扱っていたり、アメリカのダラスのキャンピングカーの中で生活する、かつてホワイトカラーの職(プログラマー)だった人がワーキングプアとなってファストフードで店長として働いている現状を追いかけたりしていた。
韓国の状況は悲惨
韓国の社会では「非正規保護法」という法律をつくり、2年以上働いた人の正社員化、違反企業には最高 1000 万円の罰金という厳しい規制を課したのだけど、これに対してある韓国の百貨店が非正規のパートを法実施の直前に大量にクビ切りしちゃうんだ。
くびになったある女性が言うんだけど、「まさか、このような手段を会社が取るとは予想していなかった」ってね。
他にはアメリカのある男性の例が紹介されていてね。元プログラマーなんだよ。ホワイトカラーだよね、でもその仕事もインドにアウトソーシングされてしまい彼は解雇されてしまう。
大学に戻ってプログラマーの資格を取るために借りた大量の借金だけが残り、今はキャンピングカーでの生活をしているんだけど、その人の仕事がねぇ、かつて自分が16歳の時にやっていたファストフードの店長なんだ。彼の働いているファストフード店には保険制度がなくて、州が提供している安い医療制度を受けようと思えば診察を受けるまで 10 時間近くも行列に並ばねばならないという状況。
いやー、怖いなぁ、と思ったよ。彼は高血圧が持病なのだけど、もう薬がない。保険もないから、どうするんだろうなぁって、人事だけど、こうなる可能性はホワイトカラーといえる職業についている人にでも起こりえるんだよね。
日本も国民皆保険が崩れつつあるっていうから、アメリカに似たような状況が近い将来日本でも影響されていくんだろうな。その時になってワーキングプアはその人が職業スキルがないからだとか、自業自得だとか言っていた人はどうするんだろう?
新しい取り組みへ
番組では実際にワーキングプアの問題を真剣に取り組んでいる例としてアメリカのノースカロライナ州で行われている例とイギリスのリヴァプールで行われている例、そして日本の自治体が行っている例が紹介されていた。
アメリカのノースカロライナ州では州と企業が協力して人材を育成していくプログラムが始まっていた。選んだ分野はバイオテクノロジー。バイオテクノロジーというのは、製品化されるさいには米国においてかなり厳しい基準が要求され、容易に海外へアウトソーシングできないということらしい。州政府も誘致にあたっては、簡単に海外へ移転できない産業を慎重に選んだ。
企業側には「技術だけもらっていなくなってしまう人よりは地元民を雇用したい」というニーズがあり、地元からの雇用を望んでいるコメントが紹介された。
きわめつけは、母子家庭や低学歴の人を教育訓練するプログラムによって、実験の技術サポートができるように支援していることだった。
クリスチャン・ブルエットさんという 37 歳のシングルマザーが紹介されていた。彼女は6歳と4歳の子をもっているが高卒程度の学力しかない。
中学校の理科の復習という地点からスタートした彼女は最終的に遺伝子のクローンができるようになるくらいまでに能力を身につけた。州立の短大でこの教育訓 練は行なわれ、彼女は両親に子どもをあずけてウエイトレスの仕事をしながら、州政府の支援によって年間 15 万円、つまり月1万円強ほどのコストで教育訓練 を受けられるのである。彼女はやがて企業への就職が決まり、まず年 270 万円の収入でスタートした。
州政府は 130 億円の予算をかけて1万人の雇用をふやし 1200 億円の税収増をしたという。
弱者を切り捨てる社会の疲弊
格差社会、勝ち組と負け組み。弱者を切り捨てる社会の疲弊は今の日本社会のところどころで現れるようになっている。もしかしたらワーキングプアの問題を真剣に取り組むことから日本社会が再び活性化するきっかけになるのではないだろうか、という気がしてきた。弱者の救済、思いやりのある社会つくり。いじめの問題もこういうところと関係性があるのかもしれないね。
日本が未来から今の時代を振り返るとき、誇りをもってやってきてよかったねぇ、といえる社会になっているか、切捨てのまま、社会もそこに住んでいる人々も荒んでいってあそこが原因だったのか、といって振り返るのか。
ワーキングプアは誰にでも起こりえるという認識をみんな、もって欲しい!
その2に続く・・・
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