永遠の優勝候補
「永遠の優勝候補」といわれたスペインからついに「候補」の2文字が消えた。攻守に完成度の高さを示して、欧州の頂点に立った。前半33分、ハーフウエー付近からセナ-シャビ-F・トーレスと一気に縦に結び、悲願の優勝を引き寄せるゴールが生まれた。
エースは10分前にヘディングでポストをたたいていた。後半にもセルヒオ・ラモスやイニエスタらが次々にゴールを襲った。ボール支配率では下回ったが、それは無駄な横パスを省いて前へと素早くつないだからだ。シュート数は13-4と圧倒。
アラゴネス監督は「手本となる攻撃を見せられた。誰もが認める優勝のはずだ」と目尻を下げた。スペインの名門Rマドリードは、最多9度の欧州制覇を誇る。バルセロナの2度と合わせた国別優勝回数でも首位に並ぶ。だが、代表は今回がわずか3度目の決勝進出。W杯は4強が最高だ。
各地域の民族意識が強く、1つにまとまりにくい国民性が代表不振の要因とされた。決勝点を奪ったマドリード生まれのエースは「代表でプレーできるのは光栄なこと。優勝で国民を喜ばせることができて誇りに思う」とはじけるような笑顔で言った。(日刊スポーツ)
フェルナンド・トーレス
スペインの選手たちは自信をもってプレーしていたね。
FWのダビド・ビジャを負傷で欠きながらも、前の試合でセスク・ファブレガスを投入の中盤5人という形にしても機能していたところを選手自身と監督が大丈夫だ、と不安を感じていなかった。自分たちのサッカーをしよう、パスを細かく回してチャンスを生み出していこう、という意志が全員から感じられた。
一番、燃えていたのはFWフェルナンド・トーレスだったと思う。チームの得点を一番稼いでいるFWのダビド・ビジャを欠き、チームに不安を与えているんじゃないか、だから僕が絶対に得点を決めてやる! という強い意志のようなものを感じたね。
だからあの得点が生まれたのだと思う。実際、シャビからのスルーパスが出たとき、フェルナンド・トーレスの飛び出しが遅れたんだよね。ドイツの左DFフィリップ・ラームはゴールキーパーのイェンス・レーマンの飛び出しが目に入る。 レーマンのボールの処理を任せようとして一瞬、どうしようか判断に戸惑ったようだった。
そこをフェルナンド・トーレスは逃さなかった。DFフィリップ・ラームとゴールキーパーの一瞬の迷いをチャンスと感じるや、自分のダッシュを一瞬加速させ、相手DFフィリップ・ラームとレーマンのわずかな隙間でボールに追いつきワンタッチでボールを見事、ゴールの方向へと蹴りこむ。
自分が絶対にチームのために決めたかった! ダビド・ビジャがいなくても僕がチームを勝利に導くんだ! スペイン代表のFWは僕だ! という意志の表れだった。
スペインのルイス・アラゴネス監督
素晴らしいサッカーをする選手を集めることができた。ボールをキープすると 同時に、さまざまなパスを織り交ぜるチームだ。相手にとっては止めるのが難しい。
出場機会の多い選手もそうでない選手もいたが、私たちは全員で懸命の努力を続けてきた。その結果が今回の優勝だ。スペインにとって幸福な日になった。素晴らしいサッカーで優勝することができた。非常に満足している。
スペイン は、これからは主要国際大会で優勝できるようになるはずだ。私たちは、サッカーの本来あるべき姿を示した。将来、多くの人が私たちを参考にするに違いない。サッカーが好きな人は、選手が素晴らしい連携でペナルティーエリアに入り、得点を挙げる様子を見たいはずだ。
私は大会開幕時、優勝できると話した。選手は私が自信をつけさせようと考えたようだ。私は、スペインが今後もこのようなサッカーを続け、多くの大会で優勝することを期待する。 ( EURO2008 )
選手交代のタイミング
このスペイン代表の監督ルイス・アラゴネスの采配が上手いなぁ、と感じた場面があった試合途中での選手交代のタイミングである。試合も後半に入るとドイツは自分たちのリズムをつかみ、いつ点が入ってもおかしくない雰囲気を生み出していた。
そこでルイス・アラゴネスが動く。まず中盤でのパス回しにリズムがなくなったと判断したのか、セスク・ファブレガスを外し、ロングパスもフィードできてピボーテのポジションもこなせるシャビ・アロンソを投入。マルコス・セナとのバランスを図らせ、マルコス・セナの守備の負担を軽くする意図をチームにはめ込む。
そしていざこざを起こしすこし熱くなっていた中盤の一人ダビド・シルバをサンティ・カソルラと交代させた。
最後は前への飛び出しにも相手DFの裏をつくことにも限界を感じ始めたルイス・アラゴネスはFWのフェルナンド・トーレスを外し、ダニエル・ゴンサレス・グイサを投入。この交代劇によってドイツはなんとなーくリズムを失い、変わりにスペインの中盤は安定を取り戻し、ゲームはずるずると時間を消費していくことになる。選手の交代時期のタイミングが試合の流れをかえた、ルイス・アラゴネスの手腕であった。
選手たちが結束?
まとまりにくいといわれたスペイン選手たちの結束が優勝の原因の一つだと思うが、どうして結束できたのだろうか?
僕が思うのはセスク・ファブレガス、シャビ・アロンソ、フェルナンド・トーレスの3人がイングランドのFA プレミアリーグでプレーしていることと関係していると思う。スペイン国外でプレーしていることにより、スペインに対する愛国心が育まれたのが影響したんじゃないかなぁと思うんだよね。
仮にこの3人がスペイン国内でプレーしてたとしたら、それぞれの地域色が強い個性を主張するばかりで、上手くチームがまとまっていただろうか? 国外でプレーすることにより、スペインにいるときに感じた地域へ対する強い気持ちよりももっと大きいスペイン祖国に感じる愛国心が育まれたのではないか? このポイントがキーだったと僕は思うんだよね。シャビ・アロンソはバスク自治 出身のバスク人だ。
数字で分析、EURO2008
ゴール、ゴール、ゴール
ここまで 30 試合が行われ、総得点数は 76 。そのうち 4 点は PK によるゴールであり、オウンゴールはまだ 1 点もない。最多得点はスペインの 5 試合 11 得点。だが、 1 試合平均のゴール数で見ると、オランダの 2.5 点が最高となる。
オーストリア、フランス、ギリシャ、ポーランド、ルーマニアは 1 点しか決められなかった。一方、最も失点数が少なかったのはクロアチアで、 4 試合で 2 点しか奪われていない。 1 試合あたりの失点数で見ると、グループリーグで 6 失点を記録したチェコとフランスが最多。両チームとも初戦を無失点で抑えた後に、 6 失点を喫している。また、ロシアとの準決勝でスペインのシャビ・エルナンデスが決めたゴールが、 UEFA 欧州選手権の本大会史上 500 点目のゴールだった。
クラブごとの統計
所属クラブごとに見ると、 FC バイエルン・ミュンヘンの選手が合計 8 得点(うち 3 得点はルーカス・ポドルスキ)で最高。レアル・マドリー CF の選手が合計 6 得点で続いているが、ルート・ファン・ニステルローイとベスレイ・スネイデルが 2 点ずつ、アリエン・ロッベンとペペが 1 点ずつと、スペイン人選手が決めたゴールは 1 点もない。だがリーグごとに見ると、リーガ・エスパニョーラでプレーしている選手が 20 点でトップ。そしてドイツ・ブンデスリーガが 13 点、イングランド・プレミアリーグが 8 点で続く。参加 16 カ国のうち、国内リーグでプレーする選手が 1 点も決められなかったのは、スウェーデン、ギリシャ、そしてルーマニアの 3 カ国となっている。
シュート、セーブ、パス
これらのゴールは、合計 875 本のシュート(うち枠内シュートは 334 本)から生まれた。最も攻撃的なチームは、 104 本のシュート数( 1 試合平均 20.8 本)を記録するスペイン。これに対し、決勝の対戦相手のドイツは 58 本( 1 試合平均 11.6 本)。スペインはパスも最も多く、今大会で 2 万 8153 本中 3014 本のパスを成功させている。またボール保持率でも 54.6 パーセントを記録しているが、トップはポルトガルの 55.5 パーセント。
反則
一 方、ファウル数が最も多いのはトルコの 102 回。 1 試合ごとの平均でも 20.4 回と、ポルトガルの 22.33 回に次いで多い。これに対し、ドイツは平均 14.2 回で最少。トルコは警告の回数から見ても 16 枚と最も多く、ドイツとの準決勝ではフィールドプレーヤー三人が出場停止になっていた。この試合では、チェコ戦で退場処分を受けた GK ボルカン・デミレルも出場停止で出られなかった。また今大会でレッドカードを受けたのは、このボルカンと、バスティアン・シュバインシュタイガー、エリック・アビダルの 3 人のみ。( EURO2008 )
世代交代の必要な各国代表
決勝前までの統計を集めたものを見てみると今後、どのような方向へ世界のトップレベルのサッカーが向かおうとしているのかが見えてくる。
全体を通じて攻撃的なサッカーをするチームが上位を占めるようになっている。当たり前だが点を取らなくては試合には勝てない。
リーグごとの得点数を見るとやはりリーガ・エスパニョーラ、ドイツ・ブンデスリーガ、 FA プレミアリーグの順となる。勢いを失っているセリエ A が数字にも出ている。優勝したスペインのシュート数とパスの多さも特出してると言っていいであろう。
世代交代が必要なイタリア 、 フランス 、 チェコ 、 ドイツ 。イタリア はマルチェロ・リッピ を監督に添えてどこまで立ちなおしてくるのだろうか? DFファビオ・カンナバーロの負傷が痛かった。点の取れるFWとして誰を起用するのかも注目するところだ。
ドイツも決勝まで駒を進めたけど、そんなに強いとは思わなかった。決勝トーナメント1回戦の相手ポルトガルはチームに全くまとまりがなくなっていて自滅した感じだし、準決勝の相手トルコは負傷者に累積イエローカードで出場できない選手がほとんどというチームを相手に何とか勝ったという感じ。
決勝トーナメントで充分に力を発揮できなかった ポルトガル 、 オランダ 。グループリーグ突破という大きな目標の重圧から開放されて、チーム全体がモチベーションを失ってしまったようだった。
ロシア と トルコ の活躍は大国に対して挑戦していく姿勢に感動したし、最後まであきらめないサッカーの面白さを改めて感じさせてくれた。
機能的なスペインのサッカー
スペインに代表されるように、今大会は中盤から前線にかけてテクニックのあるタレントがそろい、よく動いていた。昔のファンタジスタと呼ばれる選手はあまり動かなかったが、現代のチーム戦術の前には通用しない。サイドに近い位置で攻守両面でチームに貢献している。負けたけどオランダ、ポルトガル、そしてロシアにしてもそう。これが現在のトレンドだろう。
スペインにはF・トーレス、ビジャというすばらしいストライカーがいるが、優秀な中盤選手が多くの得点に絡んだ。シャビ、イニエスタ、セスク、シルバは2列目から飛び出し、ハードワークをいとわない。加えて決定的な仕事ができる。前回は手堅いギリシャが優勝したが、今回スペインの美しく機能的なサッカーが勝ったことで、世界に与える影響は大きい。
日本代表にとっても見習う点は多い。ドイツのようなフィジカルの強さを押し出したサッカーをまねするのは無理な話だが、小柄ながら中盤にタレントをそろえ、俊敏性を生かして連動するサッカーは日本向きといっていい。スペインの優勝は魅力的で、見ていて気持ちのいいものだった。(日刊スポーツ評論家)動く中盤のテクニシャン/EURO
全くの同感である。ファンタジスタのフランチェスコ・トッティ、ジネディーヌ・ジダン、パベル・ネドベドの抜けたイタリア、フランス 、 チェコの結果を見てみればわかる。
ボールも選手も有機的によく動くサッカーを見ているのは楽しい。スペインの優雅に中盤から攻撃を仕掛けていくサッカーはしばらく世界のサッカーの主流になるであろう。
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素晴らしいサッカーをする選手を集めることができた。ボールをキープすると 同時に、さまざまなパスを織り交ぜるチームだ。相手にとっては止めるのが難しい。



