Book Review, Myself - Written by B-KOOL on 木曜日, 7月 10, 2008 20:42 -

少年計数機 – 石田衣良

今回の作品もストーカー、LD(ラーニング・ディスアビリティ)、多重債務、引ったくり事件と豪華に現代社会が抱える問題のキーワードが登場。

このようなキーワードを他人事ではなく自分の身近な環境において感じることができる人って案外多いのかもしれない。

若者文化の中で起こっている出来事だ、と割り切るには自分の野次馬根性が治まらないし、無関心を決め込むのも社会性があるキーワードだけに無理。

物語の中だけで終わっているはずのストーリーを読んで、他人に起こっている厄介ごとを知って安心しているのか?

一番面白かったのは「水のなかの目」。最後はこうきたかぁ、とストーリーの展開に惹かれて一気に読んでしまった。

最初の作品「妖精の庭」はインターネットを利用したいわゆる覗き部屋のことがストーリーの流れになっていてその覗き部屋でナンバーワンの女子にストーカー行為を行う男を見つけ出して痛い目にあわせてくれ、というお話。これは僕も昔見たことがある。

たくさんの女の子の写真があって、気に入った女の子の画像をクリックすると女の子のプライベートな空間、多分自宅とかにあるパソコンにビデオチャット要のカメラがついていてそこへ繋がる。さくらもいるだろうし、素人もいるだろうなぁ、と思っていたし、女の子の行動を見て今現在自分の画面にアクセスしている人数がわかる数字がきっと女の子側にあるに違いないと女の子たちの行動を見ているうちにわかってきた。

自分の胸とか下着をカメラのフォーカスにしている女の子、カメラに向かってお話を始めたり、電話をかけたり、そのまま外出してまたすぐに帰ってくる女の子に、多分アクセス数を稼ぐためだと思うけど、自分のパソコンの前でオナニーまで披露する女の子も現れた。

ここまで過激になると逆にさめてしまって、こいつらもアクセス数なんぼで稼ぎが決まるんだろうなぁ、と読めてしまった。

学校でも会社でも教えてくれないことを、キャリバンは身体で学ぶ必要がある。この世界には他者がいて、苦痛を与える存在でも、苦痛を和らげる存在でもあることを、骨身にしみて感じる必要がある。おれたちが毎日交換する痛みゆえに、他者は大切に扱うものだということ。幼稚園の遊戯室で学ぶことを、キャリバンは32歳で学ぶのだ。なんだって遅すぎることはない。(妖精の庭)

矢口と岸の話は、めずらしくもない話。おれの周囲には掃いて捨てるほどある。高校を中退してぶらぶら遊んだ。遊びにあきると仕事を探した。中卒では身体が楽で、金がよく、格好のいい職はなかった。あたりまえだ。ふたりとも自分でなにか努力したことはない。こいつらも小脳だけで生きているトカゲの種族だった。

話の続きは単純だ。親がうるさいから家をでた。たちまち小遣いは底をついた。月2万円の家賃も払えず、腹が減って死にそうになった。最初の引ったくりを起こした。うまくいった。あとはただ習慣で続けた。けがをした人にはすまないと思っている。

泣きながら自分の事情だけ話す矢口と岸には、まったく同情できなかった。おれはだんだんいらいらしてきた。(銀十字)

少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉

水のなかの目

「水のなかの目」は女子高生監禁事件と大人のパーティーがモチーフになっている。どちらも僕にはそれらに関する知識がなかったのでグーグルしてみることにした。このストーリーには何人かの魅力的な登場人物がいる。

肉屋と呼ばれる荒事師ミナガワ、大人のパーティーの売れっ子娼婦で高額所得者のマドカ、女子高生監禁事件の犯人の一人、被害者の実の弟アツシ。

この二人に対する感情移入は物語を読み進むうちに主人公のマコトと同じようになってしまう。真の犯人が被害者の身近にいたときに、人間の嫉妬って怖いなぁ、と改めて感じた。

「ミナガワさん、大丈夫か」

大丈夫なはずがないのに、ほかに何の言葉も浮かばなかった。

「・・・おお・・・だいぶ、バラけちまったがな・・・マコトは・・・どうだ・・・」

このオッサンも、おれと同じように自分が襲われたときに、相手のことを考えていたのだ。

「おれは大丈夫。こっちにはひとりしかこなかった。なんとかぶっ倒して、ひざを潰してやった」

「そうか・・・おまえにしちゃ・・・まあまあだな・・・おれのほうは、3人がかりだった・・・鉄パイプと特殊警棒・・・めった打ち・・・されちまった」

目玉の穴に両手の親指を根元まで突っ込んで、ガキの頭蓋骨を内側から揺さぶってやった

ミナガワの顔のした半分が動いた。笑ったのだろう。

「だがな、ひとりは・・・道連れに・・・してやった・・・一番でかいやつだ・・・闇医者がおれの・・・手を洗うまでは・・・野郎の脳味噌が・・・爪のあいだに、詰まっていたぜ」

ミナガワは息をきらしながら、興奮してしゃべった。打ちまくられてだめだと観念したとき、一番おおきなガキを選び、頭を両手でつかんだという。最後に一番でかい肉を食う。ミナガワらしい選択だった。

ミナガワは目玉の穴に両手の親指を根元まで突っ込んで、ガキの頭蓋骨を内側から揺さぶってやったそうだ。やつはびくびくと魚のように痙攣し、うえにのるミナガワを残りふたりがでたらめに打ちまくる。雨の中の地獄絵だ。襲われたのは聖玉社近くの駐車場で、組のチンピラが駆けつけたときには、パーティー潰しは逃げていた。死体をひとつとなりかけの死体をひとつ残して。(水のなかの目)

目次
妖精の庭
少年計数機
銀十字
水のなかの目

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