Audience is behind her.
こちらの解説者がよく使う表現に「Audience is behind her」というのがある。どういうことかというと、曲と演技が完璧にマッチしていて観衆が見入ってしまうような雰囲気に包まれているときにこのような表現を使うことが多い。
今回の村主章枝の演技を見ていて僕はそう感じた。特にショートプログラムは完璧だったと思う。
後半、ステップの見せ所など体全部を使って表現するあたりはやはり「氷上の女優(アクトレス)」といわれているだけある。
村主章枝の場合は、ここはこうして腕を振って、大きく回転した後、前進で前に押し出すようにして回転、その次に・・・という具合にはなっていないように感じるのだ。
もう曲とそこからかもし出す自分なりの雰囲気に酔っているというか、すべてのしぐさが彼女からの感情表現から出ているものだと観ている側は錯覚してしまう。ここが村主章枝の魅力だと思う。
2008 年現在、現役女子選手としては最年長の一人であるということが、ベテランの経験豊富さと技術的な安定感、精神的充実感などの微妙なオーラとなって今の村主章枝を魅力的な演技へと駆り立てているようだ。
彼女の演技はそれほど美しい! 大人の女性としての魅力を存分に氷上の演技で見せてくれている。
2008-2009 シーズン、「ここ 2 シーズン結果を残せず、大きな変化が必要と感じた」とコメントし、 7 月にコーチをニコライ・モロゾフに変更。練習拠点も強化拠点のあるアメリカのニュージャージー州に移した。
初戦の東京ブロック大会ではフリースケーティングでジャンプミスがあったものの、ショートプログラムともに 1 位で 3 季ぶりに優勝した。
グランプリシリーズ スケートカナダではショートプログラムで技術点の自己ベストを更新して 2 位、フリースケーティングでは締めのスピンをフライングから入り忘れたため重複して点数にならなかったものの、 2 季ぶりに表彰台に上がる総合 2 位となった。
彼女の演技を見ていて昔読んだ本の中でのある孤独感に関する鈴木健二氏の記述を思い出してしまった。
孤独にならなければ、読書をすることもできない。物事を考えることもできない。勉強だけに限らず、何かの才能を持っている人物には常に孤独感が漂っている。
引退する直前、私は求めに応じて山口百恵さんと2時間あまり話し合ったことがあるが、その際、私は百恵さんに、あなたが他の若い歌手と違う素晴らしい点は、あの大観衆の中にいて、自分を孤独に陥れることができるその心のあり方にあると思うといってあげた。
ことに間奏のときにそうなのだが、他の若い歌手は、観客に作ったような微笑を送ったり、下手な踊りをやったり、腰を振ったり手を動かしたりするのだが、百恵さんはマイクロホンを静かに下げて、少しピントのあわない視線でじっとあらぬ一点を見つめているのである。
それはほんの10数秒の間なのだが、百恵さんは自分の心が歌った興奮から急激にさめて行き、また再び燃え上がっていくその過程を自分自身で感じ取っているのである。観衆はどうでもいいのである。いまそこにいるのは自分だけなのである。
これが逆に多くの人の心を捉えたのである。孤独がかもし出してくれる淋しさが、たまらない魅力となって観衆に跳ね返ってくるのである。(男は20代に何をなすべきか – 鈴木健二)
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初戦の東京ブロック大会ではフリースケーティングでジャンプミスがあったものの、ショートプログラムともに 1 位で 3 季ぶりに優勝した。



