Book Review, Myself - Written by B-KOOL on 日曜日, 11月 30, 2008 0:31 -
反自殺クラブ – 石田衣良
石田衣良さん、相変わらずうまいねぇ。物語の落とし所というか読者をぐいぐいとストーリーの内部に引っ張っていく力はたいしたもの。
きっと普段からいろいろなものを見て、聞いて、体験して、自分なりに物語を通してフィードできるように情報の整理をしているんじゃないかなぁ。
社会的な問題に関心があることも特徴で、小説の中のストーリーに出てくる主人公や脇役のバックグラウンドを使うことによって、読者はさりげなくリアリティーを感じられるようになっているんだと思う。
どんな脇役にも必ず感情的なピークを作ってあげることかな。キャラクターが内側から破れるような、抑えていた感情が溢れるような、そういうピークを必ず一個つくってあげる。それをほんの脇役にでもやってあげるというのが大事なことだと思うんです。
なるほどねぇ、どの作品にも登場するその物語の主人公のキャラクターに引き込まれてしまうトリックはこのような感情的なピークを作ってあげているからなのかもしれない。何気ない脇役でも充分個性を感じられ、人間的な魅力に引かれていく。
このような努力が物語り全体を読者が無意識に体感できるように仕向けさせてくれるから、軽いタッチのストーリーでも印象というか深みを覚えてしまうのだろう。今回の中では「反自殺クラブ」が一番印象に残った。
俺は日本中の父親にいっておきたい。あんたの子供が16歳以下だとすると、父親が自殺した場合、通常の何百倍もあんたの子供の自殺性向は高まる。こいつは単なる統計的事実。あんたは、あんたの子供まで自分と同じようになっても平気なのか。
中高年の自殺率は相変わらず高いらしい。どうしちゃったんだろう、日本の働き盛りのお父さんたち。時代の変化、社会の変化が自分の立ち位置を変えてしまったことによって見える景色に戸惑ってしまったのだろうか?
自殺してしまった自分はすっきりするかもしれないけれど、後に残された家族、身内はどのようにしてその起こってしまった事実を精神的に受け止めていけばいいのだろうか? 16歳以下の子供にとっては特にショックだろうなぁ!?
無条件の共感、受容、自己一致の3条件を満たして、あとは相手のいうことに徹底して耳を傾けること。知識は勉強できるけれど、このマインドは誰にでもあるものじゃないの。
カウンセラーの心得。特に精神科の医師にとって最初の難関は、相手、つまり患者が自分のことを受け入れてもらえるように、こちらの姿勢は無条件に相手を受け入れていますよ、100%あなたのことに共感しますよ、というような安心感を与え、患者の心を開くように仕向けることなんだけど、このような姿勢は別に医師対患者だけに適用するんじゃなくて、普通に親子関係、仕事場での人間関係、学校での先生と生徒などの環境でも利用できないだろうか?
「最低でいいんじゃないか。俺はコーサクが最低でもぜんぜん構わないよ。誰かがそばにいると何もしなくても雰囲気が変わるだろ。何か立派なことをするから、生きる価値があるんじゃない。
最低でも、くだらなくても、困ったちゃんでもいいんだ。そこにいるだけで、人間って風とか光なんかを周囲に出してるんだ。コーサクの最低を見てくれる人がいて、そいつを頼りにする人もいる。わかるか、俺たちはみんな最低でいいんだよ」
おれは自分の言葉に夢中になっていた。危うく最後に、だからおまえも生きろと付け加えそうになる。コーサクには別に応援も、激励も必要ではなかったはずだ。
最低でもいい、ありのままの今の自分の姿でもいい、といってくれる存在が身近にいないところに日本社会が抱える安心感不足を感じることができる。宗教が流行るのもわかる気がする。
生きろ! というメッセージは 福井晴敏氏の小説よりも石田衣良氏のこの作品のほうが、肩肘張らずにリラックスしながら受け入れられる感じがする。
どれほど苦しんでも、悩んでもいい。その最低の姿を見せてくれ。その姿に勇気づけられるやつがきっといる。おれたちはそうやってなんとか生き延びてきたんじゃないか。
日本社会内だけで事を見つめるから窒息してしまうんだと思う。もう少し外へと目を向けてみることで、その窒息しそうな環境からある程度は開放されると思うんだけどなぁ。
目指すべき目標などが見つかる可能性もでてくるし、余計困難なものを背負い込んだと嘆くよりは毎日汗をかいて能動的に動ける自分を発見するほうが、遥かに健康的だと思うんだけどいかがだろうか?
目次
スカウトマンズ・ブルース
伝説の星
死に至る玩具
反自殺クラブ
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Tags: 石田衣良
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