So What?, Soccer - サッカー - Written by B-KOOL on 土曜日, 5月 30, 2009 22:58 -
2008~2009UEFAチャンピオンズリーグ決勝、バルセロナ優勝
バルセロナ強し
チャンスを確実に結びつけて、ボールを取られないパス回しで中盤を制したFCバルセロナとチャンスらしい機会は前半10分までで、後はマンチェスター・ユナイテッドの試合展開ができなかったゲーム内容。僕はこの試合、スタメンを見た時点でバルセロナの勝利を確信していた。
国王杯決勝で見せた、恐るべき戦術の切れ味
勝ったら選手が褒められ、負けたら監督が責められるサッカーの世界だが、今季のバルセロナのキーマンは、明らかにグアルディオラだ。
今回の決勝でも彼の手腕は冴えわたり、故障者(アンリ、イニエスタ、マルケス)と欠場者(出場停止のアビダル)が開けた穴を全く感じさせなかった。特に秀逸だったのはディフェンスラインの組み方である。
右からアウベス、ピケ、プジョル、シウビーニョを並べるのが自然なところを、グアルディオラはプジョルを左サイドに廻し、センターにはチャンピオンズリーグ(CL)準決勝セカンドレグ同様、本来中盤のトゥーレ・ヤヤを置いた。アウベスとアビダルが出られない(よってプジョルをサイドに置かざるを得ない)CL決勝に備える意味もあったに違いないが、試合後、監督が明らかにした理由は違う。
「アスレティックが高いところからプレッシャーをかけてくるのはわかっていた。だから手を打ったんだ。自陣からパスを繋いでいく僕らのスタイルを崩さないために」
グアルディオラのサッカーではディフェンスラインの中央が攻撃の起点となる。それゆえ、今季のセンターバックは昨季までのプジョルではなく、マルケスとピケが要となってきた。2人はキックが正確で、ターゲットを選ぶセンスに長けているからだ。
今回の一発勝負の決勝でもグアルディオラはその方針を保ち、確実さで勝る本職プジョルではなく、ボールの扱いに長けたトゥーレを選んだ。緒戦は危なっかしいところもあったが、結果は正解である。(バルサ2冠のMVPは彼しかいない。–若き名将グアルディオラの誕生。)
負傷していた アンドレス・イニエスタも出場することになり、とりあえず中盤はシャビと一緒に安定することであろう。ディフェンスもラファエル・マルケスにダニエウ・アウヴェスが出場できないとなって不安も抱えたけど、キャプテンのカルレス・プジョルが出場できることもあってなんとかバランスを保てるだろうと判断。
逆にマンUのスタメンを見るとどうも納得がいかない。なんでカルロス・テベスを先発で起用しないのか? 朴智星もいい選手だけど、攻撃力を高める意味で検討したならば、全体としてのマンU独特の攻撃リズムは創出できないであろうと予測した。中盤もマイケル・キャリックはいいとして、相手方にはダレン・フレッチャーを起用したかった。
メッシの成長
バルセロナの攻めのパターンなんだけど、サミュエル・エトオがトップに張っていてティエリ・アンリとリオネル・メッシが左右から攻めあがるというもの。そして2列目からシャビやイニエスタが攻めに加わる展開。
フランク・ライカールトが監督をしていたときにはここにロナウジーニョとデコが加わっていた。トップにエトオが張っているのは同じなんだけど、左右はロナウジーニョとメッシ。2列目にイニエスタにシャビ、そしてバランスを取るデコが揃い華麗な攻撃を繰り広げていた。
そうである、アンリとメッシが抜けた二人の穴を埋めるほどに成長したことが大きい。アンリはそれまでトップで起用されず左サイドでの起用法に馴染めないでいたけど、その後はエトオの実力と自分が左に入ることでチームとしての総力を挙げることへの気付きに目覚めたのか、左サイドでの起用でも戦えるメンタリティーを身につけた。
UEFAチャンピオンズリーグ、決勝トーナメント1回戦でのリヨンとのアウェイでの貴重な同点ゴールはアンリがたたき出した。
そして終わってみれば得点王に輝いていたメッシ。ロナウジーニョが抜けた後、見事バルセロナの10番を引き継ぎ、自他共に認めるまで成長して見せた。ロナウジーニョがいた頃のバルセロナでのメッシはどこかでロナウジーニョやデコを頼っているような感じがあったけど、今では立派にチームとしての、バルセロナの10番としての自覚を発揮している。
バルセロナの復活はこの2人の成長が大きいのは誰もが認めることであろう。そしてここに今季からバルセロナの指揮を引き継いだ監督、ジョゼップ・グアルディオラの才能もチームの底力を引き上げた要因になったらしいのだ。
選手の信頼を集める
グアルディオラは38歳にして選手から完璧に信頼されている
試合後、初のタイトルに喜ぶグアルディオラは「全て選手のおかげ。どんなアイデアも巧く実行してくれる選手たちは素晴らしい」とへりくだっている。だが、チーム関係者の見方は違う。
「本当に素晴らしいのはグアルディオラが完璧に信頼されていることだ。今回の作戦にしても、リスクはあるのに、聞かされた選手たちはうまく行くと信じて疑わなかった」
国王杯獲得の3日後、バルセロナはリーガの優勝も決めた(2位レアル・マドリーがビジャレアルに敗れたため)。
経験ほぼゼロで始めた監督が、初年から2冠。実質世界最高のタイトルであるCLにも王手をかけている。バルセロナの場合、勝って褒められるべきはまずグアルディオラだ。(バルサ2冠のMVPは彼しかいない。–若き名将グアルディオラの誕生。)
同じレベルで戦えるという技術力の高さ
チームのあらゆるディテールをコントロールするペップ
監督はまた、守備陣にある作戦を授けた。ゴールキックの際、GKピントはボールをゴールのほぼ正面に置け。そうしたらピケはペナルティエリアの右外に、プジョルは左外に開け。
助走を付けたピントは前へ強く蹴るふりをして、ほぼ真横にいるピケへ出していた。ゴールラインぎりぎりの深さでボールを受けた彼は、敵のプレッシャーをいなしながら、なんとかそれを前へ運んで行った。
「浮き球に対しては(身体の大きな)アスレティックに分がある。だから、長いパスは蹴らないようにしたかった。ボールをしっかり廻していきたかった」とグアルディオラは簡単に言うが、ゴール前で自らパスを繋いでいく恐ろしい策である。
だが、効果はあった。アスレティックの陣形は縦に伸び、プレスは空転。バルセロナはみるみる疲れていく敵のプレッシャーから解放されていった。
「俺はリスクを背負うことになった」とピント。「でも、おかげで仲間はスペースを得た。信じられないかもしれないが、監督は俺たちのサッカーの、ありとあらゆるディテールをコントロールしてるんだ」。実際、試合後のロッカールームには、ゴールキック時の選手の立ち位置が記されたホワイトボードがそのまま残されていた。
ピントがピケにボールを渡したら、相手はこの方向からプレスをかけてくる。だから、ブスケッツはここ、ヤヤはここに立ってパスコースを作れ–。きっとそんな説明がされたのだろう。選手らしき印が、幾つもの線で結ばれていた。(バルサ2冠のMVPは彼しかいない。–若き名将グアルディオラの誕生。)
ここで紹介している通り、誰がスタメンで起用されてもある程度の攻撃力、ディフェンスラインから攻撃の基点を展開していく、というバルセロナのサッカーをチーム全体で共有できていることが大きい。
戦術の理解度はいうまでもないが、選手同士間でもお互いのサッカー技術のレベルの確かさを認め合っている環境がバルセロナの場合は完成されているのではないだろうか?
そのような下地があってこそ、新たな戦略、主力を欠いての戦いなどを要求されたときに選手は”なるほど、これならば戦力として戦える”という確信を得るのだと思う。
サッカーの基本的な深みのある知識から個々の選手の特徴、相手方の攻めの出方にそれをどのように防いでこちらのチームカラーを出すかにいたるまでのアイデアに、それを託す選手たちに寄せる自分からの信頼、勝ちたいという強い気持ち。
リヨンには総合6対3で勝ち、準々決勝の バイエルン・ミュンヘンとの戦いでは総合5対1と圧勝。チェルシーとの準決勝第2節、ロスタイムでの同点ゴールのシーンでグアルディオラ監督自らベンチから飛び出して選手たちの歓喜する輪の中へと走り出していた。このシーンを見て同じくチェルシーの選手から信頼を受けていたジョゼ・モウリーニョを思い出した方もいるであろう。(写真提供 – uefa.com)
マンチェスター・ユナイティッドのスタメンに疑問
それと対照的だったのがマンUの監督、アレックス・ファーガソン。プレミアリーグ終盤戦では得点王を狙うクリスティアーノ・ロナウドを後半途中で外して二人の関係がギクシャクしたり、あんなにマンUの勝利に貢献してきたテベスを完全移籍として受け入れない、などのアレックス・ファーガソンに対する不満の声が高まり出していた。
残念だけどテベスはマンUを離れることになりそうだし、C.ロナウドも移籍となれば彼を獲得したいチームはたくさん存在する。マンUは新たなフォワードを加入するみたいだし、さよならテベス、さよならC.ロナウド、といった空気が流れている。
世界サッカーの主流は攻撃的だ
ヒントは「チェルシーはバルセロナの攻撃をほぼ完封できたのに、なぜマンチェスター・ユナイテッドは守りきれなかったのか?」という点にある。
セカンドレグの最後の最後にイニエスタがシュートを決めなかったら、今頃は「バルセロナの理想を追求したサッカーは美しいが、それではやはり勝てない」と、誰もが思っていたことだろう。
チェルシーとマンチェスター・ユナイテッドでは、守り方がまったく違った。
チェルシーは、バルセロナの選手たちの技術力が高いことを素直に認めて完全に引いて守った。ボールを持たれるのは覚悟のうえ、自由にドリブルさせてもいいと考えて、スペースを埋めたのである。バルセロナの選手がドリブルで攻め込んできてもボールを奪いには行かず、ただ、パスを出すためのスペースを埋め、パスのカットを狙い続けた。「リアリズム」に徹した守り方だった。
だが、決勝戦でのマンチェスター・ユナイテッドは、バルセロナの選手が持っているボールを奪い、そのドリブルを止めようとしたのだ。そして、それを完璧にかわされた。チェルシーという「見本」があったのに、マンチェスター・ユナイテッドはどうしてそういう守り方をしなかったのだろうか? たとえば、準々決勝のポルトとのセカンドレグ(アウェイ)のように、マンチェスター・ユナイテッドはその気になれば、ベタ引きの守備的な試合だってできる。だが、彼らはそうはしなかった。
自分たちの守備力に自信を持っていたのだろう。あるいは、決勝戦という舞台で、昨季の王者としてのプライドが、ベタ引きの守備をすることを躊躇させたのか。あるいは、フース・ヒディンクは真のリアリストだったが、サー・アレックス・ファーガソンは、リアリズムに徹し切れなかったと言うべきか……。しかし、そういう守備では守りきれないことが証明されてしまったのだ。来季以降、バルセロナと対戦するチームは、みなチェルシーのように守ってくるだろう。
上のエッセイの視点にはある比較設定の要素が欠けている。チェルシーが1対1でバルセロナの攻撃を封じたのは準決勝という舞台でのこと。準決勝まではホームアンドアウェイで行われる、よってホームでの戦い方とアウェイでの戦い方は微妙に戦略を変えてくる。
マンUは決勝でバルセロナの攻撃を守りきれなかったのではなく、そのような引いて守るという戦い方を最初からしなかっただけである。決勝戦では試合は1回のみ、そこでは勝ちに行ったほうが、先取点をとり、得点を重ねていったほうが有利なのは明らかだと思う。
準々決勝のポルトとのセカンドレグ(アウェイ)のように、マンチェスター・ユナイテッドはその気になれば、ベタ引きの守備的な試合だってできる。だが、彼らはそうはしなかった、のではなくあの試合はまだホームアンドアウェイであり、決勝舞台の1試合だけという設定ではなかったから、とにかくチームが準決勝に駒を進めることが優先されるからあのような試合展開をしたのだ。
決勝ではあくまでも勝ちに行くつもりで臨んでいたはずだし、2連覇を狙っていたはずだ。ホームアンドアウェイで見せていたベタ引きの守備的な試合など最初から頭になかったはずである。
去年のEURO2008・オーストリア/スイス大会からの流れをそのままバルセロナが受け継いでいる。あの優勝チームスペインの中盤はバルセロナのイニエスタにシャビが率いていた。何かと中盤からフォワードのすばらしさが目立つバルセロナだけど、ディフェンスから常に攻撃を仕掛けていくというチームとしての方向性と戦術の浸透性が行き届いているのだと思う。
バルセロナの攻撃は中盤から始まるのではなく、ディフェンス陣の攻撃に展開させるという意識の中から生まれている。
世界中のチームはバルサのようなサッカーを目指すに違いない!
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2008~2009UEFAチャンピオンズリーグ決勝、バルセロナ優勝
Tags: FCバルセロナ, UEFAチャンピオンズリーグ, マンチェスター・ユナイテッド, リオネル・メッシ
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