So What?, スポーツ他 - Written by B-KOOL on 月曜日, 2月 8, 2010 3:18 -
女子全豪オープンテニス決勝2010 – ジュスティーヌ・エナン復活
寒い冬のニューヨーク、毎年全豪オープンテニスを観ながらしばし常夏のオーストラリアの雰囲気をテレビの前で味わうのを楽しみにしている。今年も眩しく輝く太陽の光を羨ましく思いながら、つわものどもの戦いにしばし没頭することができる。
今回は誰を応援しようか?
ジュスティーヌ・エナン復活
嬉しいことに今年の全豪オープンテニスにあの引退したジュスティーヌ・エナンが復帰するのだ。またあのバックハンドショットを観れると思うと嬉しくなり、大会中は彼女の活躍ぶりだけは見逃さないようにと、エナンの試合はどれもテレビの前に居座った。
なぜエナンは現役復帰することを決意したのか? 2008年全仏オープンテニスが始まる直前の2008年5月14日、エナンは母国ベルギーで記者会見しシーズン途中での現役引退を発表した。テニス選手が世界ランキング1位のままで現役を退いたのは史上初めての出来事であり、僕もそのエナンの引退についてエッセイを書いたりした。(ジュスティーヌ・エナンの癒されたい心 )
エッセイにも書いたがあの頃のエナンの心はパンパンに張り詰めたような状態だったのではないだろうか? それが何かほんの些細なことがきっかけで緊張の糸が途切れ、戦い続ける意欲みたいな心の中のエネルギーの火が消えてしまった自分に気がついた。
そのエナンが一旦テニス界から離れ、自分の心のわだかまりも癒され、自分が輝いていたプロテニス選手としてのイメージを現実的に受け入れられる状態にまで落ち着いたのだろうか?
それとも同国のライバルであったキム・クライシュテルスもエナンと同じように一旦引退しその後2009年8月から現役復帰、2009年全米オープンで主催者推薦(ワイルドカード)で出場、そこから勝ち上がって4年ぶり2度目の優勝を決めたことに影響を受けたのか?
確かなのはエナンの心の中に、またテニスへの情熱が生まれたことであろう。
2回戦でエレナ・デメンティエワと対戦
僕が注目した大きなマッチは意外に早く訪れた。当たり前である、エナンはシードでの出場権を得ていないので勝ち進めば当然の如くシード権を獲得している大物プレーヤーとぶつかることになる。エレナ・デメンティエワという強烈な対戦相手と2回戦で当たることになるとは!
戦いぶりを観ていると両者どちらも譲れない意識が伝わってくる。デメンティエワにしてみれば元チャンピオンが復帰したとは言え、1年半近くのブランクがあり、自分はランキングでも5位以内をキープしている。負けるわけが無い、負けるわけにはいかない!
エナンにしてもここでデメンティエワに負けるか勝てるかで今後の自分の復帰を占う上での指標になる。1年半のブランクを取り戻すことは相当時間がかかる作業なのか? 自分のテニスは現在も通用するのか?
結果は接戦の末、エナンが勝った。内容もすごい! 7-5, 7-6と第2セットはタイブレイクの末、8-6でエナンがデメンティエワを負かした。デメンティエワにしてみればこんなに早く敗退するとは想像していなかったはず、相当悔しかったことと思う。
相変わらず美しいエナンのバックハンド
それにしてもエナンのバックハンドは何なんだろう? 本当に奇麗にラケットを振りぬく。クロスに来るのかストレートに打ち抜くのか、ラケットがボールに当たる最後の瞬間までわからない。あの“ため”を持たれたらエナンは迷うことなくラケットを振りぬく。
またアプローチショットを仕掛ける際に走りながらボールに歩み寄り、奇麗なバックハンドスライスショットで相手コートに打ち返し、ネットにプレッシャーをかけていくエナンの動きは実に滑らかで洗練されている上に美しい!
エナンを観ているとシュテフィ・グラフを思い出す。しかしグラフの場合はほとんどバックハンドスライスで対応していて、パッシングショットを決めるときにだけトップスピンで振りぬいていたのを覚えている。
ここがエナンと違うところで彼女の場合は、そのほとんどがバックハンドのトップスピンでショットを放つ。2回戦でデメンティエワと戦っていた際に司会者の二人が同じようにエナンの復帰を喜んでいた。
エナンのバックハンド、クロスへのパッシングショットが決まったときに、“Remember this?”と問いかけ、お互い“Yeah”と納得していたのが印象的だった。それほどまでにエナンのバックハンドは美しい!(何回でも言うぞ!)
バックハンドは体力消耗?
どうしてエナンはバックハンドの際、片手でラケットを振りぬくのだろうか? 華奢な体つきで大柄な相手選手が放ったショットをコート中走り回り、尚且つリターンとして今度は自分も攻めに回るという激しいスポーツのテニスをする上で、エナンにはバックハンドの両手打ちでは勝ち進めない!
専門家ではないので詳しくは説明できないけど、観察したところ、バックハンドの両手打ちの場合、打った後の次の最初のステップが遅れるのではないだろうか?
上半身を激しく使うので体力の消耗も早いだろう。ボールを自分の身体よりも前で捉えるときはさほど苦にならないだろうが、ボールを捉える位置が若干自分の身体より後方へ食い込まれたとき、自分は後ろへバックステップを踏みながら両手で上半身は下半身とは逆の力関係、前へ押し出すというような力を上半身に与えてラケットを振りぬく。
セリーナ・ウィリアムズやラファエル・ナダルのようなパワーテニスを展開できるほどの強靭な体力があるならば大丈夫だろうが、ほとんどの選手が試合がもつれ第5セットなどの長丁場になったときや、非常に気温の暑い日、大会に勝ち進んで疲労が溜まってきたあたりでの試合となると、簡単に負けてしまう選手がいるのはこの体力を激しく消耗するテニススタイル、バックハンドの両手打ちが原因だと思われる。
エナンやロジャー・フェデラーのようなテニスはどうだろうか? 彼ら両方の共通点はバックハンドでも片手でラケットを振りぬいているところ。ボールが自分の体後方へ食い込まれてもバックハンドスライスで奇麗に振りぬく。
ボールを捉える際にも自身の身体はコートに対して半身になり、打った次のステップ踏み出しが速いし体力も両手打ちよりは消耗しないと思う。覚えているだろうか、去年2009年ウィンブルドンの際、フェデラーの清々しい表情に比べ、意外に後半アンディ・ロディックがばててしまった戦い方を!(男子ウィンブルドンテニス決勝2009、ロディック対フェデラー )
フットワークテニス対パワーテニス
その後エナンはベスト4進出をかけてナディア・ペトロワと戦い見事勝利。準決勝で鄭潔を圧勝で破りついに決勝進出。相手はパワーテニス代表格のセリーナ・ウィリアムズ。
対してエナンは5’ 5”とそんなに背が高いほうでもなく、パワーを武器にどんどん打ち込んでくるわけでもない。彼女の武器は全コートをカバーするフットワーク力と正確なストロークだ!
決勝第1セット
いきなり激しい打ち合いの始まり。1st GameからDeuceの展開が続いている。二人とも、第1セットを先取することの重要性に気がついているようで譲ろうとしない。ライバル意識は両者共に強いはずだ。見所はセリーナのパワーテニスにエナンがどのようなテニスで駆け引きを仕掛けてくるのか?
セリーナの1st サーブが入らないときにエナンはベースラインに張り付かず、積極的にネットへ歩み寄りセリーナにプレッシャーをかけようとしている。パワーで押してくるセリーナのストロークが始まる前に決めてしまいたいというエナンの気持ちの表れ。
2nd、5th Gameでジャッジミスがありエナンに動揺が走る。しかし予想していた通りオージー(Aussie)はエナンを応援している。ジャッジに対してのブーイングでしばしセリーナ、またかよ、というような態度。
実は過去2003年全仏オープンの準決勝でエナンと対戦した際に観客からセリーナに対してブーイングが起こり(きっかけは些細なことでセリーナの正当性を認める方多数)、最終的にこの試合を落としたことで、1993年全仏オープンから1994年全豪オープンまで続いていた4連勝記録がストップ。このときのように自分のペースを乱された過ちをセリーナは犯したくないはず。
試合のほうはというとエナン、1st サーブが入らない。自分のサービスゲームを落としていく苛々感が伝わってくる。サービスブレイクのチャンスを2度ほど落とした。プレッシャーのかかる相手との対戦。ここへきてエナンのショットと精神面でのバランスがうまくマッチしていないように感じる。
というのもセリーナのパワーショットに打ち負けまいとするあまり力が入りすぎているのかエナンが放つリターンがことごとくセリーナのコート中央に落ちる。これではセリーナ、楽チンであるし逆に自分はエナンに対して揺さぶりをかけることができる。
結局第1セット、6-4でセリーナがリード。エナンの1st サーブが入らないのが気になる。Unforced Errorも今日に限って多い。それに比べセリーナは大事なところで1st サーブをエースなどで決め、自身のサービスゲームをキープしてきた。ストロークでもところどころでWinnerを奪っている。
エナン、引退してからのブランクはこういう大舞台で響いてくる! 本調子だったら? このような気持ちじゃないだろうか?
決勝第2セット
エナンのリターンは相変わらず相手コート中央に集中している。セリーナのパワーショットを返すのに精一杯なのだろうか? 第1セットでも奇麗にセリーナからのパッシングショットを決められている。
1st サーブを少しでも有利に展開したい、展開しないとセリーナのリターンエースが返ってくる。復帰後トーナメントは今回のメジャー含めて2回目。完全にはリズムが戻っていない感じをエナンのテニスから受ける。
しかし第2セットも中盤に差し掛かるとお互いにラリーが続くようになり、エナンにも落ち着き振りがプレーから見て取れるようになった。どうやらConfidenceを取り戻したようだ。1st サーブも入るようになってきてその後のラリー上でのWinnerも取りやすくなっている。
結局、最終的には第2セット、終盤以降ではほとんどエナンがポイントを連取して6-3で奪い返す。これでイーブン、第3セットまで勝負は持ち越されることになった。
決勝第3セット
しかしやっぱりセリーナは強かった。サーブも調子がいいし、ストロークでもコーナーギリギリをつくようなリターンにパワーが加わるから、試合感も体力的にも復帰後完全でないエナンは第3セットではセリーナの相手ではなかった。
エナン、疲れちゃったのかなぁ? 集中力が途切れたのが伝わってきたし、それを裏付けるようにUnforced Errorも増え、1st サーブも入らずダブルフォルトも増えていた。
きっと改めてエナンの中で感じたはずだ、戦うためには何が必要かを! 優勝するためには何が必要かを! 1st サーブにストロークの振り分け、そして負けないという強い気持ちなど。
できるという手ごたえを掴んだ大会
試合が終わった後、エナンの表情はとても清々しかった。どこか緊張感とか大会始まる前の不安と期待感から開放されたのか、今回ここまでできたことにとりあえず満足しているようだった。
エナンはインタビューでこう語ったではないか、「See you next year !!」
優勝したセリーナのほうも去年の全米オープンの際、ジャッジに対して悪質な発言したことにより不甲斐ない終わり方をした嫌な雰囲気をこれで断ち切ることができたのではないだろうか?
セリーナは話し振りなどを見る限りとてもチャーミングな女の子なんだけどね!
女子シングルスはまたも混戦が始まる!
ウィリアムズ姉妹に二人のベルギー人(キム・クライシュテルスとエナン)の戦いが目立った感じだったが、これにロシア勢(ディナラ・サフィナ、スベトラーナ・クズネツォワ、エレナ・デメンティエワ、ベラ・ズボナレワ、マリア・シャラポワ、ナディア・ペトロワ)が加わり、セルビア人の二人(エレナ・ヤンコビッチとアナ・イワノビッチ)に中国勢(李娜、鄭潔)も調子がよければ優勝を狙える実力の持ち主!
今後の女子シングルスはまた面白くなりそうな予感がする。
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Tags: ジュスティーヌ・エナン, 全豪オープンテニス
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