広瀬隆氏の本を読むのは毎回の如く非常に苦労する。自分の勉強不足の性が理由なんだけど、内容が内容だけにもしこの史実、事実についてのバックグラウンドの知識があればもっと鮮明に訴えてくるのになぁ、とかいう場面の多く出くわす。
つまり歴史についての知識に乏しいのだと思う。よって広瀬氏の本は何回も読み返すことになり、その都度新たな発見や偶然内容を深く理解できる、といったことも読み返す度に起こる。どこかで仕入れた知識が偶然にも役に立つので何回と読んでいれば本に書かれてあるバックグランドを想像できよう。
今回は書き留めるという作業を自らに課して作業を行うことにした。調度内容的にも自分のエッセイで以前指摘したポイントがあったのと、最近聞くようになった冤罪に関するニュース、高速増殖炉もんじゅの話題をテレビなどで観る機会もあったので、補足する上でも記録に残しておく分には世間の役に立つかもしれないと感じた。
後は懐かしいとこでイギリス皇太子妃の交通事故、フルシチョフ、ダイオキシンなどのキーワードに関する話題をもう一度掘り下げる意味も込めて今回拾うべきトピックとして取り上げた。以下、簡単にまとめてみる。
ケネディーとケネディとケネデー
エイズ・ウィルスも日本ではウイルスと書かれる。これは、ラテン語のVirusが語源で、現在の欧米医療界では、ドイツ語もフランス語も英語も同じつづりながら、ヴィルスかヴィリュスかヴァイラスと発音する。この言葉は、オランダに行けばフィールスと変わり、聞くところヨーロッパで十種類以上の発音があって、統一すべきだという声があるほど多くの表現を持つが、それでも、viの「母音」としては「イ」か「ア・イ」のほかになく、「ウ・イ」の発音は、どこからも出てこない。
この訳語が日本で誕生した明治時代以来の誤った表記を、ヴィルスにしないなら、せめてウィルスと、この現代に直すべきだと思うが、近代医学界からさえ、その提案が出ない。最も近代的な用語のディジタルでさえ、改めてデジタルと誤記する言葉を作り出すこの国の言語文明は、どうなっているのであろう。
同じような内容のことを去年僕もエッセイに書いた。(カタカナ表記は誰が決めているのだろうか?)
この辺りは英語がインターネットの普及によってユニバーサル言語になろうとしている現在と未来において、もしかしたらネット社会では英語表記、英語での発音が広く人々の間で受け入れられている可能性がある。この問題は一概に強制すべき事柄ではないので市場原理に任せておけば、メリットを見出す人たちには活用されるであろうし、別に単一言語内で棲息、サバイバルできるのであれば、その重要性は豚の耳に念仏かもしれない。
目次
タイプライターをたたく猿
ダイアナ妃黄金伝説
株価暴落と頭の黒い鼠たち
この世はからくりに満ちて
子噛み孫喰い
遺伝子の逆襲
異端者への審問
尻尾をくわえた二匹の毒蛇
像の背中で焚き火をすれば
自分の墓穴を掘る人々
最後の落とし穴 – インターネット
外国人の姓名
そしてその明治維新時代の歴史について、日本の作家の多くが書いた伝記などを読んで驚くのは、日本人について実に詳しく調査されているのだが、登場したペリー提督やアメリカの初代日本駐在公使タウンゼンド・ハリス、前述のイギリス人パークスたち外国人について、彼らが何者であるか、ほとんど描かれていないことである。
ペリー提督やハリス公使、パークスについて、「姓」だけでなく「名」が記されている書物は、珍しい。歴史上の重要な登場人物を鈴木さん、斉藤さん、渡辺さんと書いて満足する作家はいないはずである。ところが、外国人について、日本人は平気なのである。現在我々が読んでいる大新聞でさえ、「名」を略し、「姓」だけで外国人を報道しているニュースは、決して少なくない。ほとんどそのような信じられない文化水準にある。
新聞は、記事に登場したすべての外国人の姓名をアルファベットで正しく記載する欄を、第一面に必ず設けるべきである。そうすれば、文中の略や誤った発音を気にかける必要も無くなる。これは、報道の第一歩とも言うべき原則ではないか。その慣習があれば、記者が外国人をおろそかに扱うことはできなくなる。それが面倒だと感ずるジャーナリストは、自分がどれほどいい加減な記事を書いてきたかと自覚しなければならない。
自分ごとで申し訳ないのだが、エッセイをラフに書いた後必ず固有名詞、人物など気になる部分や大事だと思われる箇所にはウィキペディアのリンクをつけることにしている。その後大体英語のリンクをクリックしてみるんだけど、英語のウィキペディア内のリンクをたどって目にする箇所、例えば固有人物ならばラストネーム、姓をチェックすると意外な発見がある。
この人はラテン系の子孫、アングロサクソン系、ユダヤ系、中国系、韓国系、東欧系、ロシア系、スラブ系、イスラム系など結構勉強になるし、発見する事実のインパクトは僕にとって大きい。
西アジアへ行けば名前でその人物がイスラム系かヒンドゥー系、またはチベット系かネパール系、バングラデェッシュ系、パキスタン系かが判別できるらしい。知識や知恵は己の身を守ってくれるかもしれない!
欧米社会に滞在している人にとっては多分ユダヤ系人物が社会に寄与するインパクトを少なからず感じているはずであるから(多分?)、あぁこの人はJewishなのか、と発見すると、あぁやっぱりここでもJewishなんだ、となるんだけどこのニュアンス、伝わるかなぁ? サッカーブラジル代表にアルゼンチン代表もJewish系、多いんだよね!
ウィキペディアの記事内容にいちゃもんをつける風習があることも承知の上だが、日本人のネット内でのネチケットも長い目で見て考え、やがて大人の対応が自然に身についてくるのではないかと楽観している。つまりきっと誰もがその必要性、正当性、信憑性を認めることになるに違いないと感じるのだが・・・
地球は温暖化しているか
この会議(京都の地球温暖化防止のための世界環境会議)で、「地球は温暖化するので炭酸ガスを出さないようにするため原発を建設しなければならない」と熱心に主張した日本の通産省天下り関係者と電力会社は、かつて70年代にオイルショックが襲ったとき、「地球は寒冷化するので石油を確保し、原発を建設しなければならない」と大声で主張した同じ人間である。
全世界から失笑を買った日本のエネルギー利権者の姿は、滑稽を通り越して、哀れであった。
・・・中略
本心から動植物の生命を守ろうとするなら、“本来無害で、むしろ植物の成長に欠かせない炭酸ガス”だけに議論を集中するのは、それ自体が私には理解を超える“環境論者”の遅れた意識、あるいは“政治的行動”であった。すでに直接重大な環境問題を引き起こしているダイオキシンなどの大量の化学汚染物資、食品に進入している残留農薬と防腐剤などの添加物、チェルノブイリをはじめとして全世界に広がりつつある超危険な放射能汚染、コンクリート構造物の林立がもたらす異常な都市熱、フロン、発電所の膨大な排熱、電池などの金属類を含む産業廃棄物などが、まともに京都の国際会議で議論されたのであろうか?
こうした問題を考えるとき、都会的な数字遊びの議論は、独善的な空論に陥りやすい。実際に続発している地震活動や、身近な山林の枯れ具合を観察し、一つずつ名前のある海と河川の汚れを見つめ、動物一匹ずつの生態を知ることからはじめるのが、心ある人間の流儀ではないか? 奥日光の男体山と白根山、日本一の富士山、岩手・秋田県境の八幡平など日本全土の名山では、広大な樹林が続々と立ち枯れを起こしてる。その原因は、火力発電所などが出す硫黄酸化物であった。
地球温暖化問題を左寄り、と捉えることにはいささか強引な気もするが、左翼はファッションになりやすい。俺は地球温暖化の運動に参加しているぜ、私も地球温暖化問題プロジェクトに参加している、などどこかで聞いたスローガンと同じような気がするのでいまいち馴染めない。俺はオバマを応援してるぜ、私もオバマを応援してる・・・オバマはやっぱりダメだ、今度はティー・パーティーだ!
こういうとき必要なことってバランス感覚なんだと思う。多角的に広い視野から物事を眺め観察、いろいろな意見にも耳を傾け世の中で起こっている現象、いいことも悪いことも含めすべて現実的に肯定的に捉える。それに対して自分は内なる自分の価値観というフィルターを通してオプションを準備していればいいのだと思うんだけどいかがであろうか?
枯葉剤とCIA
[quote1]
日本が輸入を許可したアメリカの大豆、菜種、ジャガイモ、トウモロコシなどの遺伝子組み換え作物を生産しているモンサントは、自分の会社で“ラウンドアップ”という極めて強力な除草剤を売り出してきたが、今度はその自社の除草剤を撒布しても耐えられる大豆などの農作物を、遺伝子組み換えで開発し始めた。
つまり農家は、葉に付くと根まで枯れるモンサントの強力除草剤“ランドアップ”を畑にまいて、モンサントの遺伝子組み換え作物だけが畑の中で生き残る、という宣伝文句である。それが、日本へ輸入が認可された商品“ラウンドアップ・レディ大豆”と“ラウンドアップ・レディカノーラ”(菜種)である。農業利権の方向から見れば、これで、除草剤と農作物の両者が、モンサントに支配される。
モンサントとは、一体どのような会社であろうか。この化学会社こそ、ベトナム戦争で生物化学兵器戦略に参加し、国防総省から年間5000万ドルの予算を与えられて、空軍の枯れ葉剤撒布という人類史上最大のBC兵器被害をもたらしたメーカーである。
・・・中略
そのベトナム戦争司令官の一人が、誘導ミサイル部門の指揮官スタンスフィールド・ターナーであった。彼は、のちにジミー・カーター大統領の時代にCIA長官として君臨した。さらに、ターナーは、CIAから転じてモンサントの重役に就任したのである。
ベトナム戦争の枯葉剤メーカーが、当時の司令官を重役室に迎えたという事実は、モンサントの遺伝子組み換え技術が、アメリカの国策として遂行されてきたことを示している。それが、現在進行しているアメリカの経済戦略と連動しているのである。
・・・中略
日本人が食べるトウモロコシは、消費者の舌に心地よく、甘みのあるハニーコーンという品種に市場が独占されつつある。ところが、これは一代交配の人口的品種であるため、ハニーコーンの種(トウモロコシの粒)をまいても、ハーにーコーンができない。その種子業者から毎年その種を買わなければ、農家は作付けできない仕組みとなっている。
・・・中略
水産高校の先生と社会問題を語らううち、遺伝子組み換え食品に話がおよんだ。すると、やはり漁業の世界でも、三倍体という異様な魚が作られているので気がかりだという。普通の魚では、雄雌の精子と卵子が受精して、父と母の性質を受け継いだ一組の染色体を持った小魚が生まれる。人間と同じである。ところが三倍体の魚では、遺伝子操作によって、三組の染色体を持った子供を作りだし、中性の魚にしてしまうのだ。したがってハニーコーンと同じように、一代しか存在できず、子孫を残さない生き物である。なぜ、この酔うな怪魚をつくったのか?
・・・中略
かつて沖縄には、ウリミバエという害虫がいた。これを根絶するため、ウリミバエに放射線をあてて生殖不能にし、大量にそれを自然界に放ったところ、交尾はするが生殖不能なので、子供ができず、やがてウリミバエが根絶された。この原理は、SF小説のようだが、形容しがたい無気味な話である。三倍体の魚は、それに近い生物である。
・・・中略
我々が食卓で口にしている食べ物は、何千年、何万年という単位の歳月をかけて、人間と動植物が互いに共存できるようにここまで来たものだ。ピンセットで遺伝子を組み換えた農作物を口に入れるとき、食べる我々が自分の体のどこをピンセットで調節できるだろう。遺伝子組み換えによって生まれた未知の蛋白質が、おそらく未知のアレルギー症状を生み出すだろうと警告されている。畑に住みミミズや微生物、クモ、昆虫にとっても、同じことである。
少し前までよく耳にしていた遺伝子組み換え農作物などの話題はどこへ行ってしまったのか? 聞かなくなったということは世間がなんの思考を凝らすこともなく、遺伝子組み換え農作物が浸透してしまったことになる。その結果が最近の子供たちに多く見られるアレルギー体質ではないだろうか?
これから食糧の奪い合いが世界規模、地球規模で行われようとしている現在、簡単に、しかも合理的で最大公約数の結果を市場から求められるならば、遺伝子を組み換え改良された新種が出回り、それらの農作物などがマーケットへと流れ込むことになる。
農作物だけに限った話ではない。魚、特に養殖魚を扱う漁業に関しても遺伝子組み換えで最大公約数の結果を出すために改良された養殖魚が大量にマーケットへ流れ込むことであろう。いや、すでにその流れは始まっているのかもしれない! 黒マグロ漁獲禁止条約などは黒マグロ遺伝子組み換えの技術を黒マグロに取り入れるきっかけになってしまったかもしれないと危惧することは大げさであろうか?
ダイオキシン、首都圏大震災、住民投票制度のトピックは他の機会にまとめることにするけど、この本はこの世の中、からくりに満ちている現象をジャーナリストとはこのようにあるべき、という姿勢とともに読者に示してくれている。浅はかに大量のニュースを消費するだけでは知識としてその人物内に養われないであろうし、知恵となって個人がその未来を選択して行く上での指標にもならない。
世の中に存在しているからくりとはどのようなものなのか? すべては本書の最後に記されている二人の人物の引用に込められている!
悲しみは知識である。多くのことを知る者は、恐ろしい事実を深く嘆かなければならない。by パスカル「パンセ」
落とし穴は知識である。多くの落とし穴を知った読者は、来るべき明るい21世紀に歓喜しなければならない。by 落とし穴に落ちたドン・キホーテ
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