サッカーU23日本代表、谷間の世代と呼ばれて


サッカーU23日本代表、谷間の世代と呼ばれて

先週行われたサッカー23歳以下日本代表の最終予選は、結果アテネオリンピック出場となったが最後まではらはらドキドキの展開だった。まず日曜日の日本ラウンド第1試合、対バーレーン戦でのまさかの敗北。1対0という結果。

試合内容は相手のフリーキックからの失点。逆に日本のフリーキックのチャンスにはボールが味方に当たるという不運に見舞われるいやな試合運びだった。後から分かったことなのだがまだ日本のほとんどの選手は、 UAE ラウンドからの体調不良が完璧には治っていなかったらしい。 大久保嘉人と平山相太もこの試合には出場していなかった。

火曜日2試合目、対レバノン代表戦

UAE ラウンドでは4対0と日本が圧倒的な強さを見せ付けたので、この日本ラウンドの試合でも大量得点が期待された。しかし試合が終わってみれば2対1というあぶなっかしい内容。阿部勇樹選手の前半早い時間帯での得点も後半、日本ディフェンス陣の一瞬のミスをつかれ同点にされる。

いやーなムードを壊したのは大久保選手のヘディングでの一発だった。満を持しての出場に大久保選手は見事結果を残す。そして最後の試合となる対 UAE 戦。この時点でバーレーンが UAE に勝っていたので、日本とバーレーンが勝ち点で並ぶという予想外の展開。日本は絶対に勝たなくてはオリンピックへは行けない状態だった。

結果3対0と勝ちバーレーンとレバノンも引き分け、日本代表が勝ち点で単独首位となり見事アテネオリンピックへの出場権を手に入れた。田中達也、大久保嘉人、平山相太の3トップという超攻撃的布陣で臨み、ディフェンス陣も守備の意識が高く試合は日本有利にことが運んだ。雨の中、国立へ訪れたサポーターはもちろん、バーレーンとレバノンの試合が行われた西が丘サッカー場へレバノンを応援しに行ったサポーターにも感謝したい。

この世代の特徴

今回の23歳以下日本代表はなぜ、谷間の世代と呼ばれてきたのだろう? 前のシドニーオリンピック代表のメンバーは、それまでに数々の国際大会で結果を残してきていた。中田英寿、中村俊輔、柳沢敦世代は、国際大会ベスト8の結果を出し、この下の小野伸二、高原直泰世代は U 20世界ユース大会で準優勝という成績。中田はすでにイタリアでプレーしており代表の中にも将来海外で、プレーできる可能性を持った選手がたくさんいた。

今ではこのシドニーオリンピック代表世代のメンバーから、高原直泰、柳沢敦、中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一、戸田和幸が海外でプレーしている。変わって今の23歳以下の世代は、技術はあるが精神的に弱いと評されるなどの問題を抱えていた。おとなしすぎる、闘争心がない、国際経験が少ないなど様々。そこで日本サッカー協会は山本昌邦監督にこの世代の強化を託す。山本監督は若い世代を育てることに定評があったからだ。

田中マルクス闘莉王と平山相太

去年10月、ブラジル生まれの日系人田中マルクス闘莉王が日本人として帰化した。山本監督はまず、この闘莉王選手を23歳以下オリンピック代表に加える。闘莉王の加入によって何が変わったのか? それはチームに闘争心が生まれた。

後ろからの声だしによって、中盤などの周りからもよく声がでるようになる。闘莉王自身のディフェンスからの上がりや、気合の溢れる身体を張った守りなどチームに勇気を与えた。そして山本監督はもう一人抜擢することになる。

なんとこの正月に全国高校サッカー大会で、2年連続得点王に輝いた現役高校生の平山相太選手である。デビューとなった同じ23歳以下の対イラン戦でいきなり得点を挙げ、チームに高さという新たな武器が加わる。確かにヘディングでの競り合いは強い。その他も U20 から加わった今野泰幸選手。彼はこのアジア最終予選の全6試合、ただ一人出場した選手である。豊富な運動量とポジションバランスの良さ、気持ちの面でも年上の選手に負けていない。

こういう強気の選手は好きだ。昔の北沢豪選手を思い出す。山本監督にとって今野選手は欠くことのできない中盤となった。A 代表を経験した選手の石川直宏、大久保嘉人、松井大輔。彼らがチームに与えた影響も大きい。右サイドでの縦への突破や、ドリブルで中へ入ってシュート、右サイドからのセンターリングなどを持っている石川選手は攻撃のバリエーションをこのチームに与えた。

大久保選手は UAE ラウンドでは代表から落選したが、チームがアウェーで戦う姿勢に彼自身感動して、いつしかチームに貢献する、チームに徹する選手に生まれ変わっていた。イエローを貰いやすい個人の自己主張が強い選手だったが今回の日本ラウンドでは何とかチームに貢献したいという姿勢を感じた。大久保選手の成長である。

怪我から復帰した阿部選手も闘莉王選手離脱の後、よくディフェンスを引き締めた。阿部選手からの精度の高いキックから得点した場面も多かった。このように多彩な選手が加わることによってチームに闘争心と競争心が生まれ、チーム全体のバランスがいい方向に向かっていったことは大きい。

山本昌邦監督の采配

山本監督はアトランタオリンピック、シドニーオリンピックでコーチとして日本代表に参加してきた。特に前のシドニーオリンピックでは、あのフィリップ・トルシエ監督下でいろいろと知識を吸収したに違いない。

最終メンバーを選ぶまでに全60名近くの選手を合宿に呼び、一人一人の個性を確かめ選択していった。トルシエもたくさんの選手の中から選んでいった。他にトルシエから教わったものとして、いかにチームの中に競争意識を高めていくか、いかにしてゲームで強い戦う姿勢を出していくか、チーム内でのコミュニケーション能力などその他多岐にわたる。

NHK の番組「クローズアップ現代」の中でのインタビューでも言っていた。彼らを育てていくためには、自分で這い上がっていく力を身に付けさせる。それがないとすごいプレッシャーのかかる中で、足が緊張で自由に動かないような中で、どれだけいい判断をしていいプレーができるかということは非常に心の問題が大きい、と。 それに向上心。

選手に一本のビデオを見せる。海外で活躍する同世代選手のプレー。アテネオリンピックで戦うことになるであろう同じ世代の選手を明確に意識させることが狙い。後は積極的に強いチームと対戦と組んだり、練習中から積極的に選手から声を出させることなどを心がけていた。

闘争心

闘莉王選手の持つ闘争心がチームの起爆剤になるであろうことを願って U 23に加える。これはその通りの結果となった。UAE ラウンドでの最終戦 UAE との試合、ハーフタイムでのロッカールームでの闘莉王選手の一声がチームを奮起させるきっかけになる。「お前らもっと走れ」

選手たちの闘争心に火がつき、ロッカールームは騒然となる。おとなしいと言われたチームが、戦うチームに生まれ変わってきたことを山本監督自身感じ始める、こいつら、本当に勝ちたいんだな、と!

そして抜擢された平山選手。日本ラウンドでの最終戦、 UAE との試合の中で平山選手が田中選手にかけてきた言葉に成長を感じる。「もっと近くにいてくれ。 達也さんは下にいてくれ、と言われました」近くにいて競り合ったボールを拾ってほしい。遠慮がちだった平山相太選手が大きな声で要求し始める。

アテネオリンピックメダルの可能性

今回のアジア最終予選を終えて一番チームに加わった大きな要素とは何であろうか? それはチームが自信を持ったことだろう。更に言えば一人一人の選手が自分のプレーに自信を持ったことだと言える。このチームは強いんだ、最後まであきらめずに戦えるんだ、という自信を持てたことは非常に大きい。

人間、生きていれば沈んでいる時や負けるときもある。自信のないときなどその底辺からどれだけまたジャンプできるか、どれだけ成長して這い上がっていくかでその人間に強さが備わってくる。谷間の世代と呼ばれたチームだが、アテネでのメダル取得の可能性は大きいと思う。このままいい勢いと状態でチームをもっと成長させてほしい。


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