村上春樹著「騎士団長殺し」を読み終わりました。


村上春樹著「騎士団長殺し」を読み終わりました。

読み終わった感想、という前に作家村上春樹氏の小説を書く技量の凄さをまず紹介しないと。プロの作家さんなんで当たり前ですけど、想像して創造する力が必要なんだなぁ、と。空想の世界(作者の頭の中で描かれている世界)の描写をわかりやすく読み手に伝えてくる技量にまず驚かされます。

自分の右脳の中で見えている景色を、自分の左脳の力(言語能力)を利用して、この世界に具体的な物語として表現していく。読み手は文章を読みながら自分の頭の中に作者の描くイメージを浮かべていくんですけど凄いなぁ、と。実際に描かれている物語の風景を見たことないにも関わらずです。以下、ネタバレ注意!!

特に凄い描写の世界観が雨田具彦のいる病室で騎士団長を殺して、”顔なが”が顔を出していた地面の穴の世界へ秋川まりえを助けに向かっていくところからの展開です。暗黒の世界から川のある風景へ進み、川を渡って森へ入り、洞窟を抜けて現実の世界に戻ってくる。大雑把に書きましたけど、実際の小説の中では物凄い技量を活用、文章として書き表し、読み手の側に内臓を締め付けるような感覚を伴いながらその世界観を想像させるんです。

病室にあった穴から、祠の穴へ移動した世界観がこの物語「騎士団長殺し」のクライマックスです、私にとっての!「1Q84」の時もそうでしたけど、現実の世界観の中に不思議でありそうであり得ない世界観を違和感なく物語に取り入れてくる。この部分を受け入れられる人と、それがダメな人でアンチに分かれるのかなぁ、と。

私は好きです、村上春樹氏の描く世界観。想像力と創造力の世界ですから、表現は自由で、受け入れられるか受け入れられないかは、読み手の好みによるというか・・・私の場合は映画でもそうですけど、リアリティーを感じることができれば良いと。フィクションですけど、良い作品は物語の中でしっかりとリアリティーを感じさせてくれるんです。

「騎士団長殺し」の作品の中で言えば、夜中に祠の穴の中から鈴の音が聞こえてきて、その後に展開される世界観です。あり得ないストーリーだけだと、物語に厚みが欠け、リアリティー感を失いますが、上手く現実の世界に存在する(物語の中で)登場人物のキャラクターが魅力的なので、全体の骨格を支えている形になっています。

主人公の絵描き。小説の中では名前が書かれている箇所、なかったように思います。この主人公と妻である”柚”との関係。浮気されて一旦は結婚生活解消させますが、非現実的な世界で結びついた関係性で妻は妊娠していきます。「1Q84」にも似たような世界観、ありました。このような世界観、私にとってはありです。

日本画家”雨田具彦”との関係。直接二人が会話するわけではないのですが、お互いの共通点、画家であるという物の見方を通しての描写に圧倒されます。画家という人物の一般的でしょうが、考えている思考形態みたいなものが少しわかったような気がします。

白毛の紳士”免色渉”との関係。成功した人物って自信があるので、怪奇現象みたいなものも、現実的に解明してみたいという好奇心の方が勝るみたいです。私は臆病なので祠まで行って石積みの塚を掘って、石組みの石室まで辿り着けないでしょう。

秋川まりえとの関係。意思を持った少女って魅力的でもあり、危険な雰囲気も漂わせていて、どこか近寄りがたい存在です。絵を描くことが好き、という主人公との共通点のお陰で、少女は主人公にだけ心を開いていきます。

プロローグで描かれていた世界観。物語が終了した後の世界でしょうか、妻との関係性を元に戻して、肖像画家としての仕事に復帰し・・・しかし、”顔なが”は主人公の前に現れ、自分の肖像画を描くことを求めている、ペンギンのお守りを持ち続けながら。読み手である我々はどのように解釈していけばいいのでしょう。個々人の想像力に託されたのでしょうか。

作家村上春樹氏の技量が存分に活かされた作品です。読後はうーん、凄いなぁ、と満足感に浸っておりました。それなりのレストラン(料金的にある程度高級な)へ行って、それなりのサービスを受けて、それなりのワインと料理を堪能してきた後の満足感。つまり、裏切らなかったということです、こちら側の期待に対して。


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