男子全豪オープンテニス決勝2009、ラファエル・ナダル対ロジャー・フェデラー


男子全豪オープンテニス決勝2009、ラファエル・ナダル対ロジャー・フェデラー

今回の 全豪オープンは期待通り、すごい展開となった。去年の 全仏オープンのとき、クレー(赤土= レンガ の粉)コートを得意とする ラファエル・ナダルの圧倒的強さを見せ付けられ(  男子全仏オープンテニス決勝2008、ラファエル・ナダルの完璧なストローク  )、そしてウィンブルドンでの芝コート。

絶対的に自信を持って臨んだ決勝だった ロジャー・フェデラー、先の全仏オープンで実力の差が一段と縮まってきたのか、それともナダルが今年のウィンブルドンだったら勝てるかもしれないと意気込んでいたのか、勝負はすごい展開となった( 男子ウィンブルドンテニス決勝2008 – What a game !!  )。

去年は 北京オリンピックもあり、そこで見事金メダルを獲得した ナダル、全米オープンでは普段より大きな大会が一つ多かった今年のツアーの疲れがたまり、思ったように調子も出ず(モチベーションも低かった)、準決勝で敗退。フェデラーとのハードコート、初の顔合わせは実現しなかった。

そして迎えた新年、全豪オープンでついに二人がハードコート決勝戦と言う舞台で初めて顔をあわせることとなった。フェデラーのほうはもうナダルの実力を完全に把握しているだろう。一方、ナダルのほうも相変わらず謙遜的でフェデラーが一番だといっているが内に秘める思いは ” 絶対に自分は勝てる ” というものだったに違いない。この二人、決勝にたどり着くまで少し苦労したというか危ない試合を経験している。

ロジャー・フェデラーの場合

第4ラウンドでの試合は トマシュ・ベルディヒ、フルセットまでもつれ込み、3-2でフェデラーが逆転して勝利をものにした。2セット先取された後、どうしてあそこまであせらず、あきらめず、あわてずに対処、その後の3セット連取というところまで持っていけてしまうのか? フェデラーの精神的強さの秘密である。

最後の5セット目ではトマシュ・ベルディヒのほうもモチベーションが明らかに途中から下がった。せっかく2セット先取したのに、なんという男だろう、とまるで驚いた感じであり、こいつに勝つことはほんとに恐ろしいというか勝利への執念みたいなものを感じたに違いない。

準決勝の アンディ・ロディックとの試合。アメリカでは唯一、現在期待できる選手ということもあり、大いに注目していたけれど結果はフェデラーの圧倒だった。

ロディックも先の試合で去年の全豪オープン覇者、 ノバク・ジョコビッチを破った快挙からもしかしたらロディックとの試合、接戦になるかもしれないなぁ、と期待していたのだけれど、フェデラーのテンポで試合は進み、いつしか自分のフラストレーションを審判やラインズマンにあたるようになったロディックは自滅していった。

フェデラーと対戦する場合、絶対に相手は感情的になってはいけない。感情的になって怒りあらわになればなるほど、フェデラーはクールになっていく。冷静の深海へと自らを引き込んでいくようにしてコート上、クールな自分で圧倒的な強さを相手に見せ付ける。こういうときフェデラーはとてつもなく強い。

別にサーブにパワーがあるわけでもない。サーブにパワーを押し付けて打ってくるのはむしろロディックのほうだった。フェデラーはあくまでもどこに打つかというポイント狙いでコートの隅、ぎりぎりのところに打ってくる。角度を鋭くして、コートにボールが着地した瞬間、激しいスピンを生み出し、そのままコート外へと勢いよく外れていく。

たったこれだけなんだけど、ボールがコートに落ちる角度、バウンドするポイント、バウンドしてからのスピンがかかってさらにボールが伸びるような感覚でコート外へ外れていく鋭さ。エースはフェデラーのほうが多かったのだ(16に対して8)。

ボールをトスするのでもすべてのショットが同じような感覚でサーブ打たれるので、最後の瞬間までどこにボールが来そうなのかの予測なんてつけられない。普通ストレートにスピンをかけるのか、斜めにボールをスピンさせるのかによってラケットの当たり面を意識してしまう。

しかし、ファーストサーブがテニスではもっとも大事な要素であるので、そこでの対応を相手に読み取れないようなモーションで打ってくるサーブは大きな武器になるのだ。

ストロークをみてみよう。フェデラーはベースラインよりも前でボールを打つことを心がけている。つまりボールがコートからはじかれて頂点に立つ前にボールをたたいているのだ。ボールが頂点を過ぎたところボールを捉えようとするとどうしてもベースラインの後ろでストロークを行うことになり、よって受け手になってしまう。

それをボールがはじく前という意識でどんどん前でたたくことを心がける。こうすると相手はディフェンシブにならざるを得ない。ボールをベースラインより前でたたくことによって有利にストロークを展開できるようになるということを前提として、そこからフェデラーは相手のリターンを2手3手先を読むような打ち込みを仕掛ける。

相手バックハンドの深いところをたたけば、リターンが返ってきたとしても6:4で相手はストレートにしか返すことができないはず、仮にクロスに打たれてもそんなに球威はないはず、という読みを常に起こさせながら試合を思考しているのだ。

試合をデザインしているというか、かつて アイルトン・セナも言っていたけど、 design to race, design to win the race 、フェデラーの感覚でいったらこのような気持ちで臨んでいるのではないだろうか?

フェデラーの冷静なテニスを見ていてそう感じてしまったのだ。相手の打ち気をそらすというか、相手のたたいてやるというようなパワーが乗ったボールを力と力で対抗するのではなく、それを受け流すように軽く打ち返して急所を捉えてしまう、相手がハッと気付くと打ち気をそがれているというか。

テニスラケットを自由自在に扱う技術といい徹底してこだわるプロフェッショナルという意識。暑かろうが連戦だろうが雨で順延しても、前日にフルセットで戦ってきてその疲れが残っているだろうと予測されようがフェデラーはいつもプロフェッショナル・テニスプレーヤーとして勝負の場に現れる。

そこには自他共に認めるチャンピオンというプライドと グランドスラムを数々制覇したものだけが持ちうる王者のオーラーが自然に漂う。逆境になってから益々強くなるという恐ろしいフェデラーである。ロディックとの試合を見た後、今年はフェデラーが勝つのではないだろうかと思ったほど。

去年、ウィンブルドンの後、勝てない時期が続きもしかしたら引退ではないか? と周囲に意識させたが本人はいつもの通り “I’ll be back next year.” 、と比較的前向き。その姿勢どおり去年の全米オープンで優勝。これでフェデラー復活、この全豪オープンを待ちわびたのだ。

ラファエル・ナダルの場合

ナダルの準決勝はすごかった。同じスペイン人同士の対決。プライドとプライドがぶつかり合ったのだ。相手の フェルナンド・ベルダスコは去年の全豪オープンで決勝まで進んだ ジョー・ウィルフリード・ツォンガを破っての準決勝進出。

ちらっと準々決勝でのジョー・ウィルフリード・ツォンガとの試合を見たけど打ち負けていないのだ。驚異的なパワーをボールに乗せてくるジョー・ウィルフリード・ツォンガのリターンをまったくそのパワーに劣ることなく切り返してくるフェルナンド・ベルダスコのリターン。そのようなつわものがナダルの準決勝相手だった。

5時間14分という全豪オープン至上一番長い試合となった。フェルナンド・ベルダスコ、95Winnersをもってしも勝てなかったのである。フェルナンド・ベルダスコは 95winners 、ナダルは 52winners 。

見ていて二人のスタイルが何処となく似ていると感じたが、フェルナンド・ベルダスコは同じスペインからチャンピオンが出たとなって少なからず意識したのだろう、ナダルのプレースタイルを研究したと思われる。

フェルナンド・ベルダスコは相当悔しかっただろうなぁ、でもナダルもこの悔しさという通り道を通過してフェデラーと互角以上に戦えるようになったのだ。フェルナンド・ベルダスコの今後に期待しよう!

  • ナダル準決勝 2.13miles run, 1473strokes, 5:14time in court, 準決勝後42時間経過
  • フェデラー準決勝 0.93miles run, 684strokes, 2:07time in court, 準決勝後70時間経過

決勝、歴史的瞬間

試合前、ナダルのフットワークを見ているとサッカー選手のようなフェイントをしていた。まるで UEFA チャンピオンズリーグの決勝リーグに顔をそろえる各国トップリーグのクラブでスターティングメンバー、それもミッドフィルダーとかを連想させた。

実はナダル、12歳のときにおじにサッカーの道にいくのか、それともテニスを選ぶかの選択をさせられている。そのおじはサッカー元スペイン代表 DF (ディフェンダー)の ミゲル・アンヘル・ナダル、やっぱり、血筋だ。ナダルの運動神経を見ているとずば抜けた才能と運動能力が必要なんだと痛感させられる。

フェデラーからは何を感じるか? フェデラーのプロフェッショナリズムを見せ付けられると、ストイックに体調、精神面での管理が大事ということを教えられる。日本人のアスリートでこのレベルといったら誰を想像するだろうか? イチローやサッカーの 中田英寿を僕は想像した。

この二人の特徴は常にファイト溢れる情熱を持ってプレーしているんだけど、とても冷静というか集中力がものすごいレベルで保たれること。さぁ、試合がはじまる。

第1セット、メンタルゲーム

ナダル、ファーストサーブのほとんどをフェデラーのバックハンド側に打ってくる、これが徹底していてストロークの間でもナダルはフェデラーのバックハンド狙い。フェデラーもナダルのセカンドサーブを狙って、素早くバックハンド側にきたボールに回り込み、フォアでリターンショットを決める。

フェデラーがナダルとの対戦では中々ポイントを得ることができないと、言っていたけど、そのような場面を随所でみることに、2、3手と攻め続けないとナダルは何度でもしつこくボールを拾い、尚且つ鋭い場所へとリターンを打ち返してくる。ものすごい範囲のコートカバー、強靭な脚力とスタミナ、 Determination 。

フェデラーには準決勝のときのような余裕が見られない、ナダルの反射神経が早いからフェデラーにプレッシャーとなって返ってくる、素早く鋭い角度で決めないと、というプレッシャーを自分が背負うことに。

それがフェデラーの甘いリターンとなって現れる、信じられないけどフェデラーのリターンがプレッシャーのためかナダルのコートの真ん中に返すというか、コートの端を狙ってもラインギリギリではなく、ほどなく中央に近いあたりにリターンをしていた。
いつもより甘い角度で入るリターン、サービスリターンなど、これをナダルは情け容赦なく叩く。ナダル、 7-5 で第1セット先取。

第2セット、ナダルのバックハンド側に集中的に打ち込む攻撃に耐えてきたフェデラー、リズムをつかみ始める。 4-3 でリードしていたナダルのサービスゲームをロジャー・フェデラーがブレイク、 5-3 とリードして一気に 6-3 として決める。

ナダルのフォアハンド側にスペースができ始めそこをフェデラー、バックハンドのショットをバリエーションを交えながらじっと耐えすきあればすかさずナダルのフォアハンド側を攻めてこのセット攻略。

第3セット、ナダルは尚も徹底的にフェデラーのバックハンド狙い、これをしつこく続けてくる。こうなるとフェデラーもどのタイミングでフォアに回り込もうかと考えるようになるから、フェデラーのフォア側にスペースが開いてくる、そこをナダル狙っている。

この日のフェデラー、ファーストサーブが入らない、よってセカンドサーブを、ストロークをといった展開に持っていかれる。ストロークになるとナダルからのプレッシャー、バックハンドを狙い撃ちされるストレス、これでもかこれでもかと攻めても拾ってくる強靭な身体能力、それが微妙にフェデラーのラケットコントロールを狂わす。

4-4 の後の第9ゲーム、ナダルに疲れが見え始める。 0-40 から Deuce へ追いつき、ここでのナダルのサーブ、なんと2時間30分過ぎて初めてフェデラーのフォア側へサーブを打ち込む。

ここで数少ない切り札をきってくるかぁ、という感じ、ゲームが始まってから2時間30分間はずっとフェデラーのバックハンド側へサーブを打ち込んでこの大事なポイントで勝負。見事、エースとなりアドバンテージへと、その後のポイントを決めて、ナダルリードの 5-4 。

それにしても何と Deuce の多い試合だろうか、 6-6 でタイブレークへ、ナダルこのセットをゲット。結局第1セットに続き、接戦を制したナダル、2セットとリードを広げる、このセットは大きい。フェデラーに焦りが見え始める、ゲームの要所要所で、プレッシャーからか焦りからか慎重になりすぎてミスをするケースが増えた。

第4セット、相変わらずフェデラー、ファーストサーブが入らない。ストロークの際、バックハンドをあまりにも多く打っているのでフォアの感覚が鈍っているのか?

2-2 の第5ゲーム、すごいショットの連続であった。この二人のレベルのテニスはすごい、他を圧倒しているといってもいい、準決勝まで見てきたテニスはなんだったんだろうと思わせるほど驚異的、こんなテニス、見たことない。

どちらも譲らない、7度目の Deuce の後フェデラー何とか自分のサービスゲームをセーブ、 3-2 からのナダルのサービスゲームをブレイクして 4-2 としてからのフェデラーは調子が良かった。そのまま 6-3 とフェデラー、難なくこのセットをゲット、観客からものすごい声援。

第5セットへ、この二人の戦いはここまでくることになる運命なのだろうかと思わせるほど。2-1 での第4ゲーム、フェデラー、リズムを崩す、ナダル一気に 3-1 とリード、続くゲームも連取、 4-1 とあっさりなってしまう。

第6ゲーム、フェデラーのサービスゲーム、ここでのフェデラーに対する声援はすごかった。これに勢いづけられてこのゲームキープ、これで 4-2 。

5-2 と再びナダルリード、フェデラーはどうしたのだろう、途中から覇気を失ったようだ、あきらめてしまったというか、集中力が切れてしまったというか、このままのパターンだと絶対に自分は勝てないと、悟ってしまったというか。ここでもフェデラーのファーストサーブは入らない、結局、フェデラー、自分のサービスゲームをブレイクされて、そのまま 6-2 であっけなくナダル優勝を決める。

ナダルの試合を内容を見る限り、2、3年前までは実力として追いつかなかったフェデラーと戦っているうちに、いつの間にかフェデラーの実力に追いつき、フェデラーを抜いてしまったように感じる。

フェデラーは後一つグランドスラムを取れば、 ピート・サンプラスと並ぶといったプレッシャーを背負ってしまったか? 去年の全仏オープンで負けたのはある程度は受け入れられる、クレー(赤土=レンガの粉)コートはナダルの王国だ、しかし、ウィンブルドンでは違った。

芝のコートでは自分のほうがキングである、と自負していたがナダルに負けてしまった。それからは負けが何度か続き、自信を失いかけたけど、なんとか全米オープンで優勝、全豪オープンのハードコートへ向けてのいい準備ができた。

しかし実際にナダルと対戦してみてフェデラーは悟ってしまったのかもしれない、天才ゆえに自分の可能性が見えてしまったというか、もしかしたらこの先、2度とナダルには勝てないかもしれないと。

あのトロフィー受賞の時にインタビューで泣き崩れてしまったフェデラー、複雑な感情が渦巻いていたのだろう、オージーに声援を受ける、オージーはこれでも自分をサポートしてくれる嬉しさ、絶対に勝ちたかった全豪オープンでのまさかの決勝での敗戦、悔しさと惨めさという感情はフェデラーを強くするだろうか?

冷静に見てみよう!

フェデラーは対策を立てなければいけない、ナダルがしつこく自分のバックハンド側を責めてきたような、自分もナダルにしつこく責め続ける何かを自分で見つけ出し、戦略として磨けることができるか? ナダルに何度しつこく拾われようが冷静に何度でも自分のほうも対処、絶対に最後は自分が決めるという精神状態をポイントが決まるまで持ち続けることができるか?

ナダルはまだ22歳、これでグランドスラムタイトル6つ目獲得、もしかしたナダルのほうがピート・サンプラスの14という記録を抜く可能性をもっている。この二人のライバルというものすごい死闘は後、どのぐらい見ることができるのだろう、今回の全豪オープンで二人のすばらしいテニスを見ることができて、本当によかった!

ナダルはまだまだ強くなる、相手が強ければ強いほど、自分の中でまだ眠っている才能が呼び出され、強靭なテニスとなって相手の前へ現れる、なんというテニスプレーヤーだろうか? テニスプレーヤーではないな! 彼はアスリートと呼んだほうがいいかもしれない、ものすごいアスリートがたまたまテニスをやっていて活躍しているのだ!


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