NHKスペシャル「インドの衝撃(2)」 – ジェネリック医薬品


NHKスペシャル「インドの衝撃(2)」 – ジェネリック医薬品

アメリカで活躍するインド人。特に企業におけるインド人の役割は大きく、 フォーチュン 500 に掲載される企業の役員クラスには多くのインド人が在籍していて、彼らの経営的手腕、数学的思考分析力に頼らなければいけないほどといわれています。

噂には聞いているけれど実際のところ本当のインド人流ビジネスとはどういうものなのか? 頭の回転が速い、数字に強い、頭脳明晰でありアメリカ人と議論してもロジカルに反論してくる逞しさとは?

今回の NHK 特集「インドの衝撃」第2弾ではインド流ビジネスのほんの一こまを紹介してくれた内容のものでとても参考になりました。日本の少子高齢化社会と関わりのある ジェネリック医薬品というものが今後どのように発展、展開されていくのか? 日本薬品市場、世界薬品市場で次のようなことが起こりつつあるのです。

Generic 、ジェネリック医薬品

特許が切れた薬と同じ成分で作る格安の薬のことを示していて、インドでは若くて優秀な科学者、薬学博士たちがコストダウンを追及しています。ジェネリック( 後発医薬品 )医薬品の特徴としては研究開発も安いため安く作れるということ。先発薬60円に対してジェネリックは18円という安さです。

後発医薬品(こうはついやくひん、 Generic drug )とは、成分そのものやその製造方法を対象とする 特許権が消滅した先発 医薬品について、特許権者ではなかった医薬品製造メーカーがその特許の内容を利用して製造した、同じ主成分を含んだ 医薬品をいう。

先発医薬品の特許権が消滅するとゾロゾロたくさん出てくるので「ゾロ」「ゾロ品」「ゾロ薬」等と呼ばれていたが、商品名でなく有効成分名を指す 一般名( generic name )で処方されることが多い欧米にならって、近年「ジェネリック医薬品」とよばれるようになった。(ウィキペディア参照)

大阪の製薬会社、 共和薬品工業

2007年10月、日本にある製薬会社の 共和薬品工業( 大阪市淀川区に本社を置く ジェネリック医薬品メーカー )をインドの製薬会社ルピン( Lupin )が100億円で買収します。

2007.10.11 共和薬品工業
インド・ルピン社による弊社株式の取得に関するお知らせ

この度、共和薬品工業株式会社(以下、「弊社」)は Lupin Limited (本社 インド・ムンバイ、以下「ルピン社」)と資本提携することとし、ルピン社が弊社株式の過半数を取得することになりましたのでお知らせ致します。

弊社は 2005 年8月より、ルピン社とジェネリック医薬品に関する協力契約を締結し、共同開発を推進して参りましたが、今般、より密接な関係を構築することになりました。

これによって、当社の製品開発、製造販売に対して、ルピン社の研究開発力及び国際マーケティング力が戦略的に加わり、相乗的に大きな価値を生み出すことになりますので、日本市場における長期的なコミットメントを示すことができるとともに早期にリーディングカンパニーの地位を確保できると判断しております。

インドは世界で最もジェネリック医薬品業界の成長の著しい国の一つです。弊社は、この度の関係強化により、中長期経営計画の中で、日本市場における主導的立場を担うために邁進すると共に今後もルピン社と共にグローバル戦略を積極的に推進し、国際的な視野に立った製品及び技術の向上を目指して参ります。

尚、ルピン社は研究注力型の主要なジェネリック企業です。また、プネ市に最先端の研究所を有し、抗結核薬及びセファロスポリン(抗感染症)、CVS(心血管系)のグローバル・リーダーであり、糖尿病薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗ぜんそく薬においても優れた存在感を有しています。

現在、アメリカ及びヨーロッパを含む多くの先進国及び発展途上国に向けて、原薬及び製剤の開発、製造及び販売を行っています。 2006 年会計年度の売上は約 203 億ルピーです。( 参考資料 )

日本を狙う製薬大国

インドは ムンバイに本拠地を構えるルピン本社。現在インドで第6位という実力で現在世界80カ国に進出しています。今注目を集めるインドの製薬産業は世界的競争力を誇っていて、 IT に次ぐ成長産業として世界からの注目を引き付けているそうで、その内の一社であるルピン社が日本市場への進出を始めたのです。

ルピン社の売り上げは 共和薬品工業 の80億円を超える520億円、この5年で倍増しています。創業者はルピン・ディッシュ・バンドゥ・グプタ会長という人物で今から40年前にルピン( Lupin )を立ち上げ、現在の売り上げは500億円弱から、3年後には倍増する計画です。

世界的規模で見た場合、日本の製薬分野は2番目の市場規模ということ。その理由から日本ジェネリック市場、世界中の製薬会社から熱い視線を送られ、日本の社会が抱える問題解決へ向けてのタイミングもある程度マッチしていることから今後大きく成長していく期待が見込まれています。

少子高齢化、医療費負担増などのキーワードのほかに国民皆保険という理想も崩れつつあり、医療現場でも格差による対応の利用可能範囲が目に付いてくることでしょう。

治療費が高すぎて余裕がない、薬代が生活費を圧迫しているなどの背景もあることが要因の一つになっているのでしょう、日本政府が進めるジェネリック普及策というものがありまして、平成24年度までにジェネリック使用量を倍増させる計画だそうです。

マーケット規模は現在のところ4千億円ですけど今後1兆円以上に膨らむ予定とのこと。 第一三共もインド第1のランバクシン社の製薬会社を買収して 後発医薬品の新規参入を開始しました。ルピン社も日本の会社更に何社か買収する計画を持っているそうで、 共和薬品工業にないものを補っていくそうです。

妥協を許さないインド流ビジネス

ルピン社のトップであるカマール・シャーマ社長は5年以内に ジェネリック医薬品業界の9位を狙うと語っています。ヴィノッド・ダーワン氏は日本担当責任者です。

2007年11月、取締り会議が行われインド側(ルピン社)から7人訪れるました。そこでの会議の模様をすこし映像で紹介してくれたんですけど、インド側からの質問攻めに日本側(共和薬品工業株式会社)の経営陣はたじたじという感じで、インド製薬会社日本法人社長の川端一博氏、買収された日本企業副社長、杉浦健(創業者の孫)氏もその場にいます。

その会議でのインド側からの質問は例えば10月10.6%、11月4%、利益率のデーター説明を持ち出してきてなぜこんなに落ちているのか? と日本側に説明を求めます。日本側は即答できません。なぜと問われてなぜそれが疑問に感じるのか? 別に気にしていなかったです、というような雰囲気を日本側の経営陣は漂わせお互いの顔をじろじろと見ながらどうする? といった感じです。

在庫調整によるものと日本側は説明するんですけど、なんでですか? というインド側からの質問にまた戸惑っていました。今までこうやって来たんだからこうすればいいんだ、的な雰囲気の日本側。しきたりや習慣の概念がないインド側。あるのは事実を裏付けている数字だけで、徹底して数字の意味を確認する姿勢を崩しません。

そこからインド側は判断を下していかないといけないので、その数字がどのような環境の下出てきたのか? その数字が示しているビジネスにおける背景というものの詳細を知ろうとするんですね、世界標準では当たり前のことですけど。

日本側の経営陣はインド人経営に大して恐れと同時に頼もしさを感じる、などとの印象を示していました。結果が出ているかどうかが重要視される、プロセスは構わない。こういうことがアメリカにおける フォーチュン 500 に掲載される企業内でも行われているんだろうなぁ、と想像しました。

インド国内の製薬業界

インド国内の製薬業界上位10社の売り上げの伸び率は16%、先進国を中心に世界各国に輸出しています。A社は新薬を創造、特許開発した後、その後20年間は独占できる仕組み。こうした薬は先発薬と呼ばれ、先進国の大手がほとんど開発しています。豊富な資金を持ち合わせていることが研究やリサーチなどの基礎体力への投資に当てることができるためなんですけど、その特許切れる薬をB社、C社、D社、といったインドにある製薬企業などが狙うんです。

ではなぜ今注目を集めるインドの製薬産業は世界的競争力を誇っていて、 IT に次ぐ成長産業として世界からの注目を引き付けているのか? その秘密はインド独特の特許政策というものがあったことと関係しています。

インド独特の特許政策

1970年、インドで「 The Patent Act 」というものが法律として発行されます。この法律の内容ですけど、海外で認められている薬品、特許期間中でもインド国内では自由にコピーをすることが認められるというもの。

先進国側からすれば特許をコピーするなんて違法だろう、ということになりそうですがインド国内で抱える問題を解決するための狙いが特許法には含まれていました。つまりコピーを認め、安い医薬品の普及に努める、多くの貧しいインド人にそれらの薬が手に入るように仕向ける、というものです。

ですけど単純にその薬の製法をコピーするということでもなかったようでして、本来の薬の作り方、製法などは特許法により保護されていることを踏まえて、コピーをするにも製法を変える必要があったということです。ここでインド人の実力、数学的才能が開花する機会が訪れます。

数学に例える

原料→問題(製法A、製法B,製法C、製法D)→化学反応

薬の成分は予めわかっています、つまり解答というか求める結果内容は把握して、わかっているという状況。その中間に当たる問題の解き方は一つではありません。ここをインドの製薬会社、工夫してよりコストの安い製法を考える必要があったのです。

原料→化学反応→有効成分

  • 5+5=10 (特許法で守られているある薬の製法)
  • 2+2+2+2+2=10 (製法A)
  • 1+9=10 (製法B)
  • 5×4-10=10 (製法C)
  • 100/2-40=10 (製法D)

その後、インドでは薬の特許期間中のコピーは禁止されましたが、コストの安い製法を見つけるノウハウはジェリネック薬に生かされるという産物を生み出しました。不純物が発生する、なるべく減らして有効成分の割合を高めればコスト減に繋がるということから始まって、温度や pH をどのように設定するのかがポイント、などという議論が展開されます。

ロジカルシンキングを養う

ここでの科学者、薬学博士同士の議論が凄いんですけどインドでは普通の出来事なんです。彼らが育ってきた学校環境には説得、 Debate に力を入れるというカリキュラムが存在しています。インド人小学生の授業を見せてもらいました。

あるトピックに対する議論の場を設け、一人の男の子に対してクラス全員が反対意見を持って臨んでいますけど、その男子生徒、次々と上がる反対意見に対してロジカルな意見を持って議論を展開してくるんですね。

1対マスでもロジカルに自分の論理を主張する強さ、こうしたネゴシエーションの場を子供の頃から訓練して育てているんです。どうしてでしょうか? 背景として多様な民族、言語、宗教で構成されるインドでは考えの違う相手に説得力を持って自分の考えを伝えることが、成功条件の一つとされていることがあげられます。

自信を持って話ことはすごく大事とされていて、普段からコミュニケーション力を付けることを求められます。インドでは常識なのでしょう、こうしたコミュニケーション力向上が、自信と自立心が養われるということにつながり人生の様々な過程で自分を有利に展開させることへの手段として使用されます。ビジネスの現場では営業力として発揮しているようです。

インド人営業マン

インド国内では800を超える製薬会社が存在していて激しい競争が繰り広げられています。そこで各社力を入れているのがその薬を販売する営業マン。営業マンの研修から実際にドクターのオフィスへ出向いての営業活動を紹介してくれました。

ある営業マン、ドクターの診療所とおもわれる待合室へと入っていきますがすでにそこには自分のほか何人もの営業マンが自分の順番を待つべく待機しているのです。

長い間待つことやっと自分の番が回ってきていざドクターの前で営業活動を行います。次から次へと自社製品を説明していくんですけど、対応するドクターも日々いろいろな営業マンと接しているせいか、変化球を交えて質問返しを営業マンに投げかけてきます。

しかし、営業マンもそこは心得ていて繰り広げられる質問に対してもロジカルな思考を交えて答えを即ドクターに返答してくるんですね。それが終わってドクターが” I will think it over. “などといったら次の商品をすかさずドクターの前へと表示して新たな営業活動を再開。

断られても断られても決して悲観することなく、新たな可能性、展開を自ら試みている姿勢を映し出していました。そのインド人営業マン、自分の営業活動に自信を持っていると語っていましたね。

どんなときでも自信を持って相手を説得するインド流ビジネススタイル、あくまでも結果が大事だという基本方針を貫き、決算上にあわれれる数字の意味をすべて理解して次への戦略に生かそうとする姿勢。これらを可能にしているインドの教育現場。

ビジネス上の経営に関してはインド人とパートナーを組んだほうがいいのではないか、という僕の考えの裏づけはこういうところからきています。

日本産業下支えの物作り、作れば売れる時代からの脱却は経営力を鍛えることでもあります。インド人と比較されると最初のうち、日本人は落ち込むこともあるかもしれませんけど、日本人は目標を与えられれば大丈夫、僕はそんなに悲観していません。

インドへ格安医療ツアー

介護の問題を解決するためにインドネシアやフィリピンから人材を輸入しているようですけど、病気の治療に関してはアメリカ社会ではインドへ格安医療ツアーを提供する保険会社などの誕生が注目を浴びているようです。

日本人が同じサービスを利用するには英語の必要性という問題も生じてしまいますけど、日本側、インド側から通訳をつけるなど、その間となるサービスを展開できれば日本でも広まるとおもいますけどいかがでしょうか?

☆ メディカル・ツーリズム、 白内障、心臓手術はインドがお得?

ポイント1.インドは欧米並みの高度な医療設備・技術を持った病院が多い上、手術コストが欧米より格段に安い。この事実は知らなかった。

例えば心臓手術の場合、アメリカだと5万ドルかかるが、インドは5千ドル。肝臓移植はアメリカが50万ドル(高い!)でインドは4万ドル、 骨髄移植もアメリカが40万ドル(高い!)でインドは3万ドル。

たいがいの手術は10分の1程度の費用で済むらしい。今自分で数字を打っていて ” 安い! ” と感じてしまった。これだったら日本からもインドの病院施設にお願いしたい人、たくさんいるであろう。

ポイント2.インドの主要病院グループは手術の成功率を公表している。

インド最大手の病院チェーン「アポログループ」の場合、国内外で38の病院を経営し、4千人の医師がいる。すごい! 心臓手術の施術数が5万5千件で成功率は99.6%。腎臓移植や 放射線療法にも定業があるらしい。

「エスコーツ」は心臓外科と神経科の専門施設として有名で、国内外に15の病院を経営している。 血管造影治療で8万件以上の実績があり、心臓手術は施術数4万3千件以上で成功率は99.2%。

「アラブィンド」は眼科専門の医療機関で、アメリカだと1650ドルかかる白内障の手術費が、なんとたったの10ドル(昼飯代と同じぐらいか!)だという事実。

ここでも自分で数字を打っていて ” 安い ” と感じてしまった。これじゃ、日本の病院に頼るよりも ” インドへ行きましょう ” という人が増えるだろうな。看護士とか人手不足の上、賃金も安く長時間労働を強いられるのであれば、ちょっと頑張って英語の勉強をすれば、多くの日本の患者さんに対してインドの施設へ預ける橋渡し的なビジネスを展開できると思うのだが、どうであろう?

ポイント3.アメリカやイギリスでは、医師の3割がインド人である。

ここがアメリカとかイギリスの患者が有利なところであろう。すでにインド人の医師に抵抗がないので、それならば本国へ行きましょうと、保険会社がインドの病院で手術を受けるツアーを企画、販売している。保険会社にしてみれば、往復の旅費プラス治療費込みでも十分インドのほうが安く付くのだ。

今日本の病院の経営は競争時代に入ったから、気が付いたらこのようなシステムを取り入れているところがグーンと大きくなっているんだろうな。(  インド経済成長ストラテジー、その3(ドバイ)  )


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